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都立大は人生のターニングポイント。学問や人との出会いで気付いた自分らしい働き方

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人文社会学部 人間社会学科 日本語教育学教室2022年度卒業
株式会社ジーネット 東京営業所

人文社会学部 人間社会学科 日本語教育学教室 卒業生。幅広い学問と出会えるカリキュラムに魅力を感じ、都立大に進学。在学中は心理学や観光学など自身の専攻分野ではない授業も積極的に履修しつつ、大学祭実行委員を務めるなど、キャンパスをフル活用した。就職活動は様々な選択肢を視野に入れながら取り組み、組織風土に惹かれた現職に2023年4月に入社。現在は営業職として、町工場などのものづくりの現場で使用する機具や工具を卸売店に販売している。

様々な学問がつながっていく面白さ。都立大で広がった学びの可能性

――子どものころはどのようなことに興味を持っていましたか?

幼少期は、たくさんの夢を持っていました。料理が好きだったので、ある時期はコックさんになりたかったのを覚えています。また、キャビンアテンダントや歌のお姉さんになりたいと考えていたこともありました。

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ただ、歳を重ねるにつれて、お金のこと、資格のこと、将来の働き方や生き方……など、いろいろなことに思いをめぐらせるうちに、やりたいことがわからなくなってしまいました。

そのため、高校生のころはひたすら目の前の勉強に打ち込んでいましたね。将来の夢のために何か行動を起こすというよりも、とにかく与えられた課題をこなそうと、真面目に授業を受け、宿題に取り組み、国語や数学、英語や歴史などの科目と向き合っていました。

――都立大を志した理由を教えてください。

都立大を選んだのは、カリキュラムに大きな魅力を感じたからです。先ほどお話したように、将来やりたいことがわからなくなってしまっていた私は、大学進学を考える際も、特定の学部に志望先を絞ることができませんでした。

しかし、都立大でなら、1年次に教養科目を幅広く学んだ後、2年次に入ってから自分の専門分野を決めることができます。特に人文社会学部 人間社会学科には、専門科目として社会学や社会人類学、心理学、日本語教育学など幅広い7つの分野が展開されていて、年間の履修可能な単位数にも上限がありません。1年次の間に、まずはひたすら興味の赴くままにいろいろな学問に触れてみる。そして、自分が何をしたいのかをじっくりと考えてみる。そうした学び方ができる点に強く惹かれ、都立大を第一志望で受験することに決めました。

――大学では、どのような日々を過ごしましたか?

学業に関して言えば、心理学や日本語教育学、観光学など本当に様々な授業を履修しました。一見するとどれも関係がないように思われるのですが、例えば観光におけるオーバーツーリズムには特有の人間心理があるといった形で、学べば学ぶほど、あらゆる学問の内容がつながっていきました。それが本当に面白くて、在学中はいろいろな授業をどんどん取ろうと、前向きに学びと向き合っていました。

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その中で私が専門分野に選んだのが、日本語教育学です。「ら抜き言葉は絶対に許せない」と語っていた浅川哲也先生の言葉に強く共感し、先生の主宰する日本語教育学教室に所属して「可能表現の過剰使用(二重可能動詞)」について研究しました。

可能表現の過剰使用とは「減らせることができる」「行けることができる」といった、2つの可能表現を併用してしまう誤用のことで、それらはどの程度存在しているのかを割り出すために、国会答弁のデータベースを参照し、誰が・どのような場面で使っていたのかを分析しました。その結果、人の属性や場面に限らず相当数の事例が見つかったことから、可能表現の過剰使用は単なる個人の言い間違えではなく、社会の中で確実にトレンドとして起こっている事象だということがわかりました。

ほかには、大学祭実行委員としても活動していました。1年を通じて非常に忙しい課外活動でしたが、大学や業者との折衝や大学祭の安全管理などを行う中で、社会人としての基礎的な力が培われたように思います。大学祭の全ての工程を終え、門を締めたときに感じた「やりきった感覚」は言葉では表せないくらい大きな経験でした。

都立大は人生のターニングポイントになった場所

――現在はどのような仕事をしているのですか?

工作機械や機具・工具、設備機械、環境機器、住宅設備機器を扱う専門商社で営業職として働いています。私のお客さまは、中小メーカーや町工場などに機具や工具を卸している町の工具店(販売店)です。大田区や品川区、港区や江戸川区といったエリアを主に担当し、お客さまのお困りごとを伺いながら、最適な製品をご提案・販売しています。

――どのような軸で就職活動を行い、現在の仕事に就いたのですか。

就職活動では、接客業と営業という2つの軸を掲げながら、幅広い業界で仕事を探していました。その中でも現在の職場を選んだのは、働きやすそうな職場環境に大きな魅力を感じたためです。また、内定から入社までの間、人事担当の方が内定者一人ひとりに対して丁寧に寄り添ってくださり、こんな会社はほかにないと感じ、入社を決めました。

就活時に気が付いたのですが、私は何かを選ぶとき、「当たり前のことを大切にし、価値を生み出す」ということを大切にしているようです。営業職も、どの会社にも存在する当たり前の職種ですが、それをないがしろにするのではなく、私なりに「この人は日本語が綺麗で、いろいろな話がしやすいから相談してみたい」と思えるような営業になりたいと思っています。これからもこの軸を大切にしながら、キャリアを考えていきたいです。

――仕事のやりがいを教えてください。

知識の豊富さが求められる仕事なので、勉強を重ねながら何とかお客さまに食らい付いていく大変さや難しさはあります。でも、大きな裁量を持たせてもらっているので、お客さまに本当に必要なものは何なのかを考えながら提案できる楽しさを感じています。私は人と話をするのが大好きなので、その点を活かしながらお客さまと関係を築けたときは、思わずガッツポーズをしてしまいそうになります。

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実はこの先、人事や総務の仕事もしてみたいと思っているんです。現在の営業職とは全く別分野の仕事ですが、自社の扱う製品について理解を深め、どのようなお客さまと向き合っているのかを知ることは、人事や総務の仕事にも活きてくるはずだと考えています。いずれ人事や総務として良い仕事ができるように、今は目の前の仕事をしっかりと頑張っていきたいです。

――都立大での学びは現在の仕事に活かされていますか?

日本語について深く学んできたため、仕事で文章を書くときは、これまでの学びが大いに役立っていると感じます。また、お客さまには言葉遣いをとても気にされるご年配の方も多いため、そうした方々と話をする上でも、正しく丁寧な日本語を使えるという点は私らしい強みになっていると思います。

日本語教育だけでなく、心理学や社会学など多彩な学問を学んできたことで、広い視野が培われました。物事を多角的に捉え、その背景を考える癖がついたことも、お客さまへの提案を考える上で活きていますね。

――最後に、小俣さんにとって都立大とは?

ターニングポイントになった場所です。高校生から大人に切り替わるタイミングでもありましたし、将来やりたいことがなかった私が、学生生活を送るうちに「やりたいことを探そう」と前向きに考えられるようにもなりました。

そして何より、都立大では本当に多様な人と出会い、いろいろな人に支えてもらった4年間でした。今思えば、高校までの私は、自分の周囲にある環境は「当たり前にあるもの」だと思っていたんです。でも、大学に入り、そうではないことに気付きました。お世話になった先生方はもちろん、大学でできた友人や先輩後輩は、私にとって本当にかけがえのない存在です。

周囲の人を大切にしながら、前を向いて自分らしい生き方を探していく。そんな人生の姿勢を会得できたのが、都立大でした。

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  • 登場する人物の在籍年次や所属、活動内容等は、取材時(2024年)のものです。