本学大学院博士後期課程の根岸弓さん(人文科学研究科 社会行動学専攻 社会福祉学分野)と三戸部純子さん(人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス学域)の社会人入学者2名が、このたび学部からの学び直しを経て、博士号を取得しました。
根岸さんは都内の大学を卒業後に通信業界で4年ほど働きましたが、可愛がられる甥の様子と、繰り返し報道される子どもの虐待死事件との落差から児童虐待の問題に興味を持ち、2006年度に26歳で都市教養学部の社会学コースに入学しました。学びの中で善悪の価値基準を問うことに関心を抱き、虐待された児童が望む対応を知りたい気持ちが強まったことで大学院に進学。国際比較研究などを通じて「日本の被虐待児の福祉に資する児童虐待対応法制度の構想――評価指標の構築および制度構想に対する理論的・経験的検討――」のテーマで博士論文を提出し、学位審査に合格して博士(社会福祉学)の学位取得に至りました。
三戸部さんは看護師として13年間病院で勤務し、後輩指導に当たる中で心理学に興味を持ったのを機に、都市教養学部の心理学コースに入学して、再び学業の道に身を投じました。その後、心理学でヒューマンエラーの勉強ができると知り、医療の安全に関する研究をしようと大学院に進んで取り組んだ結果、「看護師の類似薬剤名に対する識別の正確性:薬剤名への指差呼称の影響」のテーマで博士論文を仕上げ、博士(学術)の学位を取得しました。三戸部さんは「看護学と心理学の学習成果を活かして、多角的な視点で後進の指導や研究ができるようになりたい」と今後の抱負を話しています。
学部の同期として入学した2人は、入試の段階から顔見知りだったため意気投合し、励まし合いながら学生生活を送りました。入学当初は年齢のギャップから周囲になじむのに苦労しましたが、同じ立場の友人や、他の学部生の中でも気楽に会話してくれる人がいたことで乗り切れたということです。大学院進学後も寸暇を惜しんで研究に明け暮れた努力の結果が、今回の成果に結びつきました。社会人入学で学部から学び直した学生が博士号を取得するケースは珍しく、今後も後に続く方々が現れることが期待されます。
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