本年度4月の入学生は、学部が1,684名、大学院が博士前期、博士後期、法科大学院を合わせて819名、助産学専攻科が10名、プレミアムカレッジが本科、専攻科、研究生コースをあわせて99名で、入学者総数は2,612名です。皆さん、ご入学本当におめでとうございます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆さま方に、心よりお祝い申し上げます。
最初に大学の学びについてお話しします。高校までの学びは、自主的に進めていく探求学習などにおいても先生からしっかり指導を受けることが前提で、全てを自分の意思によって何かに取り組む機会は少なかったのではないかと思います。これに対して、大学というところは戸惑うほどに自由です。必修科目などをきちんと履修するという制限はありますが、それでも学問でも課外活動でも皆さんが自由に使える時間が大幅に増えるはずです。この自由、特に学問の自由が、大学が守るべき一番大事なところだろうと思います。ただし、自由はすごく重いことに自分でも気がつきます。自由というのは、自分で決断して行動し、その行動に責任を持つことです。大学ではルールを守る限りあまり干渉されませんし、学問についても、授業で学ぶ以上に自分から主体的に学ぶことが基本になります。こういう責任ある自由は、最初は放り出されたようにつらく感じるかもしれませんが、時間が経つにつれて楽しくなるはずです。自分の意思で学ぶことは研究にもつながり、魂が羽ばたくような体験をもたらしてくれるからです。大学の教員も研究者で、自然界や社会や人間を相手に学び続けています。本学でぜひすばらしい指導者に出会い、本物の考える力すなわち知性を身につけ、学ぶことの喜びを経験してください。
本学は東京都が設置する総合大学で、しかも中規模です。広い分野の学問を学べるとともに、学生同士や教職員の顔が見える大学と言えます。私自身この大学に来て30年以上になりますが、人々の間の垣根が低く、決して馴れ合いにはならないけれど温かみのある大学だとずっと感じ続けています。こうした雰囲気の中で、学生の皆さんに伸び伸びとした気持ちで学問や研究や大学の活動に打ち込んでもらいたい、そうできる環境を守り続けることが学長の使命だと考えています。この大学で皆さんは本当にいろいろなことに積極的に関わってください。そして、大学生活を通じて一生続く仲間を作り、ともに汗と涙を流し心ゆくまで語り合い、時には喧嘩もし、燃えるような恋をしてください。過ぎ去った後で、数々の後悔も含めて間違いなく懐かしく思い出す貴重な学生時代を、大切に、しかし恐れずに歩んでください。このキラキラとした若い時代の経験は、皆さんの心の中でこれからずっと光り続け、皆さん自身を励ますだけでなく周りの人々への優しさの源となるはずです。
最後に、社会がAIの利用やデジタル化などで便利になっていく一方、地球温暖化や先日のミャンマーの大地震のような自然災害に見舞われ、国同士の武力や経済の争いがおき、日本では急速な少子化が進むなど、未来への不安が募ってきています。しかし、大学での学びと経験はきっと皆さんが秘めている力を大きく伸ばし、結果として地球と世界を救うような強さにつながっていくと私は信じています。学問でもスポーツでも課外活動でも、何か熱中できることを見つけそれに全力投球することは、必ずみなさんの心と体を強くし、仲間と力を合わせて困難な問題に立ち向かえるしなやかな知性を育ててくれるでしょう。どうぞ世界を見てください。皆さんの前には、広大で未知なことにあふれた大海原が広がり、まだ見ぬ友人や仲間が皆さんを待っています。大学は目的地ではなく出発点です。今日から恐れずにこの大海原に乗り出し、自分には何ができるのか、何を目指すべきかを探りあてられることを、心から期待しています。一緒に頑張りましょう。本日は、本当におめでとうございます。
2025年4月6日
東京都立大学 学長 大橋隆哉