キービジュアル

東京都立大学の「学び」を体験! ― ボンジェ ペイター

Profile
BONTJE Peter 教授
  【教員紹介】

健康福祉学部 作業療法学科

キーワード
作業療法士, 障がい, トレーニング

病気や障がいのある人から、活力を引き出す作業療法士

イメージ1
生活活動すべてをサポート

重い病気やけがで、身体が思うように動かなくなり、今までどおりの生活が送れなくなることがあります。そういう人たちが、リハビリテーションを通して、より満足できる生活が送れるようサポートする、それが作業療法士(OT)の仕事です。リハビリテーションと聞くと、歩く・手指を動かすなどの筋力トレーニングを思い浮かべる人が多いようですが、作業療法の場合には生活活動すべてがリハビリになります。生活活動とは、朝起きてから夜寝るまでのさまざまな日常生活のことで、食事やトイレ、入浴などの基本活動だけでなく、仕事や学校、社会交流、遊びや楽しみの場などでの活動も含まれます。

患者さんと作業療法士が一緒に問題を解決

訓練で、指が動くようになって食事が自分でできるようになったとしても、一日のほかの時間にすることが何もなければ、誰でも退屈し、場合によっては「自分は何もできない」と気持ちが沈んでしまいます。そこで作業療法士は、こうした一人ひとりと向き合い、その人が、生活に何を望んでいるのかを聞き取って、生活をよりよく改善するための提案をし、サポートを行います。人の生活は多様なので、知らないことにも直面します。例をあげれば「キッシュ(卵と生クリームを使ったフランスの郷土料理)を作りたい」と患者さんが言ったとして、作業療法士が作り方を知らないということがあります。その際には、患者さんから作り方を聞きながら、「この工程は難しいので別の方法を考えましょうか」などと、患者さんと一緒になって問題解決をしていきます。

活力は、幸せな生活の原動力

作業療法士が一方的にサポートするのではなく、本人の問題解決能力をアップさせるような働きかけをすると、例えばキッシュができたときの達成感、自信もさらに強まります。そうした自信や喜びは、生きるうえでの活力になるものです。そして活力がみなぎっていると、元気に生活することができます。作業療法士とは、日常の小さな達成感の積み重ねから活力を引き出す、魔法の仕事でもあるのです。

患者さん一人ひとりの生きる喜びを支える作業療法

イメージ2
作業療法とは、生活活動療法

作業療法とは、英語の「Occupational Therapy」の訳ですが、この「occupation」は、本来はもっと広い意味で、「時間の過ごし方、活動」なども含みます。作業療法というより、生活活動療法といったほうが正しいかもしれません。
作業療法の歴史は古く、紀元前のギリシアや中国の医学などで既に、芸術に親しんだり仕事をしたりすることで人々の健康を促進させる療法が行われていたと言われています。毎日の生活を生き生きとしたものにすることが健康への早道なのだと、昔からよく知られていたのです。

生きる楽しみを引き出す

身体が思うように動かせず、以前にはできていたことができなくなると、人は気落ちし、生きる張り合いもなくしてしまいます。しかし、そのような身体の状態でも、自分なりの楽しみを生み出すことは可能です。作業療法士(OT)は、患者さん一人ひとりに寄り添い、そうした楽しみを引き出せるよう働きかけます。新しい趣味や仕事を見つける、新しい交流の場を見つけるなどもその一例です。しかし中には、やりたいことが見つからないという人もいます。その場合、作業療法士が何らかの目標を設定し、提案するという方法や、毎日の生活の中で模索しながら楽しみを見出す方法もあります。

生きるための可能性と達成感を実感

3回連続して心筋梗塞で入退院した一人暮らしの87歳の女性は、退院後、非常にさびしいのと再発作を怖れて不安にかられていました。作業療法士はデイケアでその患者さんから話を聞き、手芸が上手なことがわかったので、絵を描くことを紹介して、技術を身に付けるサポートをしました。そして、できた花などの絵を、デイケアの利用者と共に楽しんだり、遠くに住んでいる娘さんへ郵送したりすることができました。1年後、この患者さんは「私は健康で、もっと長生きしたい」と言うまでになりました。病気や高齢であっても、絵を描く作業をとおして、人とのつながりや成長の可能性、達成感を実感してもらうことができたのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

日本に来る前、私は4カ国で生活していました。日本の高校生の中には、宇宙人に興味のある人が多いそうですが、自分の国と異なる文化圏で暮らすということは、宇宙人の生活を間近で見るようなものでもあります。そうした異なる生活慣習を知るのは面白いことですし、人と関わる作業療法士という観点からも、非常に勉強になります。実際に、作業療法士になると、海外で活躍する機会も少なくありません。東京都立大学作業療法学科で、一緒に世界の「宇宙人」たちについても勉強しましょう。


夢ナビ編集部監修