本文へ移動します

ミニ講義 ― 東京都立大学の「学び」を体験!
串山 久美子 教授

串山 久美子 教授
H30再編後の所属
システムデザイン学部 インダストリアルアート学科
串山 久美子 教授 【教員紹介】
キーワード:
デザイン, イノベーション, デジタル

触ることで新たな体験を生み出す「インタラクティブアート」

イメージ1
鑑賞者が参加して完成する芸術

単に鑑賞するだけの作品ではなく、人の動作や動きなどに反応して変化する芸術作品を「インタラクティブアート」と呼びます。インタラクティブとは相互作用という意味で、人が動くことで映像が変わる、触れることで光を発するなど、鑑賞者の参加によって完成する作品といえるでしょう。最近では芸術表現としてだけでなく、社会の中でコミュニケーションツールや広告にも使われるようになっており、スポーツ競技会の開会式やコンサートなどの舞台演出、文化施設の案内などにも使用されています。

絵本でインタラクティブな経験

本を読むという行為には、紙の触覚やページをめくる音など、独特の体験があります。そこにデジタルな仕掛けを加えたインタラクティブアートも生み出されています。カメラとプロジェクターを仕込んだデスクライトの下で絵本を読むと、センサが読者の動きを感知して、そのシーンに合った動画を絵本に投影する仕掛けです。ページをめくるだけでなく、こする、回す、手で絵を補足するなど、ストーリーに対応した動作をすることで、投影される映像が変化し、行為がストーリーに関与していくインタラクティブな体験をすることができます。

触れると温度を感じるディスプレイ

触覚をテーマにしたインタラクティブアートに、「サーモエステシア」という作品があります。これは、触れると冷温感覚などの温度を感じることができる冷温感ディスプレイで、炎の映像や雪の結晶が映し出されると、その映像に対応してディスプレイの温度が変わるというものです。これは視覚障がいのある人も楽しめるアートです。また、幼児に知的な刺激を与えるツールとしての使用も考えられます。 現在のインターネットは視覚と聴覚だけの情報ですが、触覚を刺激するツールができれば、インターネットの情報がさらにリアリティのあるものになるでしょう。人間のプリミティブ(根源的)な感覚である触覚は、今後注目される分野です。

「イノベーション」は、芸術と科学の融合から生まれる

イメージ2
絵画に先端科学技術を用いたダ・ヴィンチ

有名なモナ・リザを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチは、偉大な芸術家である一方で科学者としての一面も持っていたため、絵画にも当時の先端科学技術を取り入れた創造的な表現を試みていました。 ダ・ヴィンチの時代から500年がたち、科学が進歩した現在も、常に芸術と科学の融合により、新しい表現が作り出されています。現代ではコンピュータなどのデジタル技術を応用したメディアアートという表現方法が多く使われるようになってきました。さらに、鑑賞者の介入に対応して作品が変化するインタラクティブアートという表現も、芸術のみならず舞台演出や広告に用いられるようになっています。

芸術から問題解決のツールへ

インタラクティブアートは問題解決の方法としても用いることができます。例えば、視覚障がいのある人は点字に触れて文字を理解しています。一方、近年教育現場でも普及の進むタブレット型情報機器は、触覚のみで操作や判断をするのが難しい道具です。そこで、タッチ情報を感知できるシートに点字を印刷し、タブレットにのせて使用する教育機器が研究されています。正確にタッチした時に情報を音声でフィードバックさせることにより、触覚と聴覚を活用した学習につながります。こうした研究の実用化にはタイムラグがあるものですが、数年後の商品化が期待されています。

「イノベーション」を創造するには

イノベーション(技術革新)は、一つの要素技術だけでなく、工学的な技術や意匠的なデザイン、感性工学など他分野の技術を結集して生み出されるものです。新しい価値観を創造し、人の心を揺さぶるアートを生み出すには、分野をまたいだ知識が必要になります。さらに、イノベーションを世の中に送り出すこれからのクリエーターには、リサーチ・企画・プロデュース・編集の能力も必須です。未来のクリエーターはダ・ヴィンチを越えるほどの多彩な能力を兼ね備えなければならないかもしれません。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

大学は自分の興味があることを自分で選んで学び、自ら実践する場所です。それに対して高校では、受験のための勉強で受け身になっているかもしれません。でも、自分が興味をもったことを掘り下げたり広げたりしてみてください。
理系でも文系でも、美術や音楽を専攻したい人も、興味がある分野だけではなく、別の分野も学ぶことで、四方に広がった根を張ることができます。それが支えとなって成長し、いつか大きな花を咲かせることができるのです。どうか、あなた自身の感性を大事に育ててください。


夢ナビ編集部監修

ページトップへ