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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
野口 昌良 教授

野口 昌良 教授
H30再編後の所属
経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース
野口 昌良 教授 【教員紹介】
キーワード:
財務諸表, 公会計制度, 行政サービス

地域住民が理解しやすい自治体の財務諸表とは?

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先進的な公会計制度の導入

2018年現在、東京都は新しい公会計制度を導入しています。これは民間企業で採用されている会計の仕組みを、公共部門に取り入れて財務諸表を作成するというものです。この仕組みは、実は世界標準に近い先進的な取り組みなのです。しかし、すべての地方自治体がこの仕組みを採用しているわけではありません。総務省は2015年に「統一的な基準による地方公会計マニュアル」を公表して、財政マネジメント強化を推進していますが、実はこれは東京都が採用している方式とは異なる方式で、両方式で作成される財務諸表は、現状、単純比較できない仕組みになっています。

財務諸表の利用の仕方も自治体による

財務諸表をどのように作成するかだけでなく、どう利用すれば良いかも重要なポイントです。利用の仕方は自治体によって異なります。例えば、財政的に厳しい自治体であれば、いかに「効率的」に必要な行政サービスを提供するかといった点を考えなければなりません。他方、潤沢な予算を持つ自治体であれば、財政を切り詰めるよりも、地域住民に必要なサービスをいかに「効果的」に提供するかといった点を考えていくことになります。画一的な利用ではなく、置かれた状況に応じて財務諸表をどう行政に生かしていくか、それぞれの自治体の創意工夫が求められています。

地域住民が理解しやすい財務諸表をつくる

民間企業の場合、財務諸表の主たるユーザーは、ある程度の専門的知識を有する投資家や金融機関などですが、自治体の場合、財務諸表を利用する外部ユーザーは地域住民です。しかし、自治体の財務諸表に記載されている情報は、難解な専門用語に溢れていて、一定程度の専門知識を持っているユーザーですら、理解するのが難しいのが実情です。地域住民が財務諸表を通じて自治体財政を十分に理解できるようになれば、両者のコミュニケーションを改善し、より良い行政サービスの提供が可能になります。

町田市は進んでいる!~新しい公会計制度の導入~

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町田市の公会計制度

東京都町田市は、公会計の領域で最先端をいっている自治体です。町田市の財務諸表では、単純な現金収支にとどまらない、フルコストの財政状況が把握でき、しかもコスト構造を事業別・施設別に経年比較できる仕組みになっています。行政評価を通じて、事業別の業績を予算編成に反映させることにより、効率的な資源配分を実現しようとしています。もちろん、町田市は行政組織なので、その運営には、効率性のみならず、公平性の視点も必要ですが、同市の事業別財務諸表の作成は、実施している事業のどこに改善の余地があるか、どうすれば無駄を省き効率的な行政サービスを提供することができるか、という問題に対して非常に効果的な取り組みだといえるでしょう。

図書館事業では

例えば、町田市の図書館事業の場合、同事業の行政評価シートから、貸出点数や蔵書回転率の目標値と実績値を比較することができます。さらに、蔵書1点当たりのコストや、開館日1日当たりのコストも把握することができます。そしてそれを図書館ごとに比較することができるのです。町田市には8つの図書館があるのですが、1日当たりのコストなどを図書館施設ごとに比較することによって、どの図書館がもっとも効率性が高いか、それはどのような要因によるものかなどを把握することによって、図書館事業全体の効率化を図ることができる、というわけです。

業務委託の意思決定もできる

図書館事業だけでなく、高齢者福祉事業でも同じように事業効率を比較できます。例えば、一部の業務を民間事業者に委託しようとするとき、自治体がすべて運営した場合と民間事業者に委託した場合とで、どちらがコストパフォーマンスが高いか、比較検討する必要があります。その際、従来の現金収支だけではコストが正確に把握できません。事業別・施設別にどれだけのコストがかかるのかを比較できて初めて、業務委託すべきか否かという判断ができます。町田市の仕組みであれば、業務委託の意思決定もスムーズに行うことができるのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

会計学は内容を想像するのが難しい学問かもしれません。しかし、会計は、卒業して社会人になれば、必須の知識となる、重要なテクノロジーです。また、会計学を理解するには数学の知識が必要と思うかもしれませんが、実はその計算にあたって用いるのは主として四則演算で、高等数学ではありません。それよりも、企業の活動をどう数字で表現するかが重要で、これは外国語と同じような一種の「言語体系」といえるでしょう。
もし会計学に興味があるなら、外国語も含め、グローバルな視野を持てるような学習に力を入れてください。


夢ナビ編集部監修

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