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ミニ講義 ― 東京都立大学の「学び」を体験!
大須賀 沙織 准教授

大須賀 沙織 准教授
H30再編後の所属
人文社会学部 人文学科
フランス語圏文化論教室
大須賀 沙織 准教授 【教員紹介】
キーワード:
音楽, キリスト教, 宗教

ドレミの音階とキリスト教の関係は? 西洋音楽の起源・グレゴリオ聖歌

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グレゴリオ聖歌とは

カトリックの典礼音楽として、グレゴリオ聖歌があります。これはラテン語の祈りの言葉にメロディーをつけた単旋律の音楽で、古代の遺産も受け継ぎつつ、中世まで長い時間をかけて育まれてきました。そのリズムは飛躍と休息からなり、風のうなり、波の動き、鳥の羽ばたきなど、自然のリズムが反映されています。フランスでは現在でもグレゴリアンの形式を守っている教会や修道院があり、神に捧げる祈りの歌を聴くことができます。日本でもグレゴリオ聖歌の愛好者は意外に多く、演奏会がときどき開催されています。

ドレミの階名の起源に

現在使われている「ドレミ」の階名は、西暦1000年頃、ベネディクト会修道士で音楽理論家のグィド・ダレッツォが考案したとされています。グレゴリオ聖歌には膨大なレパートリーがあり、聖歌隊歌手たちは覚えるのが大変でした。どのように教えたらいいか考えたグィドは、洗礼者聖ヨハネ賛歌の歌詞のはじまりがut(do)、re、mi、fa、sol、laとなっているのに一音ずつをあてはめて音楽教育にとりいれました。また、典礼音楽の旋律はもともと記憶を頼りに口伝で伝えられていましたが、音の動きを示すネウマという記号が生まれ、やがて四線譜に四角の音符を書き込んだ楽譜が考案されて、五線譜の起源となります。

フランク王国の統一にも利用された聖歌

8~9世紀にグレゴリオ聖歌への統一が行われる以前のフランスでは、地方や教区ごとに旋律や歌詞が異なり、その土地固有の聖歌も歌われていました。そのため別の地域に行くと祈りを共唱できない状況でした。そこで、ローマとの結びつきを強くしたフランク王国のピピン3世とその子シャルルマーニュ(カール大帝)は、西方キリスト教世界の王としてローマ式典礼への統一を図り、グレゴリオ聖歌の整備、統合、普及事業を推進しました。ガリアにおいては地方聖歌への愛着や誇りも強く、導入への抵抗もありましたが、グレゴリオ聖歌は徐々に浸透していき、精神的な国内統一にも用いられたのです。

聖母マリアにはさまざまな顔がある? フランスにおけるマリア崇敬

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ノートルダム大聖堂は1つではない

2019年4月に起きたパリのノートルダム大聖堂の火災は、フランスだけでなく世界中に深い悲しみを与えました。ノートルダム大聖堂は精神的にもフランスの中心となってきた建造物で、もともとパリの街はノートルダムのあるシテ島を中心に広がっていきました。「ノートルダム」とは「われらの貴婦人」、つまり聖母マリアを意味します。12~13世紀はマリア信心が深まり発展する時期で、それはちょうど北フランスを中心にゴシック建築が花開く時代と重なっています。シャルトル、ランス、アミアン、ストラスブールなどフランス各地に、マリアに捧げられたノートルダム大聖堂が次々と建設されていきました。

相次いだマリアの出現

フランスでは中世から聖母マリアが特別な信心の対象となり、各時代、各地でマリアの「出現」が起こってきたとされています。とくに大革命後、19世紀のフランスはコレラの流行、七月革命、二月革命など、暴動や災厄に見舞われ、社会的混乱のさなか、マリアが修道女や子どもたちの前に現れ、メッセージを伝えたとされているのです。バルザックやユゴーの時代のことですが、1830年にパリで、1846年にラ・サレットで、1858年にはルルドで「出現」し、現在も多くの信者が集う巡礼地になっています。

地方色豊かなマリア像

聖母の図像には、マリアの生涯を題材にしたもののほか、玉座の聖母、ピエタ、無原罪のマリアなど、さまざまな型があります。各地の教会を訪ね歩くと、マリアのどの側面がその土地で特に大切にされてきたかや、土地ごとの表現の違いが見えてきます。シャルトルのステンドグラスの聖母は褐色の肌で大地母神のようですし、オータンの柱頭彫刻では、エジプト逃避の緊迫した場面でありながら、丸顔のマリアは完全な信頼と平安のうちに、穏やかな表情を見せています。このようにマリア像だけに注目しても、時代ごと、地方ごとの多様性が見てとれます。フランス文化を読み解く際にも、こうした宗教的基盤を知ることが鍵になるのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

大学は、あなたが好きなことを選んで学べる場所です。受験勉強をしているときは孤独を感じることもあるかもしれません。しかし、一人の時間は内面を育てる上でとても大切です。私自身、受験勉強のさなかに価値観を変える作品に出会い、大学に入ってからも一人で読書をしているときが何より豊かな時間であったと感じます。大学ではこれまでに得た知識を生きた形で深めることができます。世界史の授業で学んだ出来事を自分の問題として考えたり、実際にフランスに出かけ、教会や世界遺産を訪れたり、体験を通して学んでほしいと思います。


夢ナビ編集部監修

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