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上野淳学長 式辞

上野敦学長

 南大沢キャンパスは丁度今桜が満開です。キャンパスも皆さんを歓迎しているかのようです。
 首都大学東京へのご入学、心よりおめでとうございます。又、本日多数ご列席頂いている保護者の皆様方にも心よりお祝いを申し上げます。
 本日、首都大学東京は、学部生1,649名、大学院生874名、合計2,523名をお迎えすることができました。いうまでもなく、皆さんお一人お一人が本学の重要な構成員であり、共に本学の教育研究を発展させていく重要なパートナーです。心より歓迎致します。

 学部に入学を果たされた皆さんに申し上げます。学長からのメッセージです。
 厳しい受験勉強や入学試験を無事パスされて、今は「ホッ」としておられると想います。もしかしたらこれからしばらく「のんびりできる」と考えておられるかもしれません。しかしそれは違います。「これからが本当の勉強」です。「これから‘本物の知’との出会いが始まる」と考えて頂きたいと強く願います。
 私は本学の前身の東京都立大学から助教授・教授として30年以上教鞭をとってきました。多くの学生と出会い、そして研究教育を共にしてきました。大学での教育研究は教授と学生諸君との教え合いだと考えて教育にあたってきました。彼らは入学してきた瞬間は、皆同様に強い眼の輝きを持ち、未来への強い期待感に溢れた輝かしい表情をしています。丁度、本日の皆さんのようにです。しかし正直に申し上げますと、卒業を迎えるとき、何故かその輝きには差がついているのです。「この学生は非常によく育ち、この社会の未来を支える力強い人材に育った」と実感できる学生と、「何とか卒業には辿りついたけど、社会に出て荒波に抗して行けるのだろうか」とやや不安を感じる学生がどうしても出てきてしまうのです。どうしてこういう差がついてしまうのでしょうか。考えてもみてください。入学試験は本学の場合、平均5倍、6倍の競争率です。こうした入試を経て入学を果たされた皆さんは、現時点で学力や資質の差は殆ど無いに等しいといっても過言ではありません。では何故、こうした差がついてしまうか?それは言うまでもなく、入学後の一人一人の「学びの姿勢の差」にあるのです。
 いうまでもなく大学は知の拠点です。しかし、漫然とそこに存在しているだけでは、そして漫然と講義に出席し試験をかいくぐって必要な単位を取得していくだけでは、皆さんの将来にとって有効な何ものも授けてあげることはできません。能動的、積極的に未知の世界に挑戦していく姿勢こそが皆さんを育てます。「本物の考える力」、「未来に果敢に挑戦する力」は能動的・積極的な学びの姿勢によってのみ獲得できるものです。
 自分の選んだ専門分野を心の底から愛してください。このことが先ず大事と言えます。同時に、総合大学である本学の特性を十分利用して、幅広い教養を学んでください。このことこそが真に皆さんの力になります。そのためには、能動的に果敢に学びに挑戦していただくことがどうしても必要です。この姿勢・積極的な探究心のみが諸君の真の成長の源です。本学はそうした学生諸君の真の意味での学びの活動を全力で支える態勢を整えております。
 例えば、教養科目群は、総合大学としての本学の全部局が提供する120科目以上のメニューによって成り立っています。教養科目群は本学の場合、この中から14単位、つまり7科目を単位取得することが条件ですが、これから考えても、専門を越えて学ぶことができる教養科目群のメニューの豊富さは本学の大きな特色の一つですし、この規模の大学では殆ど例を見ないと考えます。
 学ぶチャンスは無限に近くある、ということですが、勿論こうした授業科目メニューの豊富さだけでは意味がありません。単に講義に毎回受け身の姿勢で出席しているだけでは、真の学力、教養は身に着きません。この講義を元にして、授業時間外学習、つまり、関連文献を深く読んだり、予習・復習をしっかり習慣づけたり、レポートを提出したりの学習が真の力を養います。本学ではこうした能動的な学びをサポートするTA(Teaching Assistant)をしっかり配置し、学生の学びを支える仕組みの構築に熱心に取り組んでいます。
 又、本学の成績評価は厳格でありたいと、その改革にも取り組んでいます。漫然と講義に出席しているだけで単位取得が保障されるのでなく、厳格な成績評価によって学生の学びの質がしっかり評価される仕組みを構築していきます。
 私は本学の優れた大きな特徴の一つは、本学の教員の高い研究力が質の高い教育へと結びついていることにあると考えています。高い研究力と質の高い教育の好循環です。本学の個々の教員の研究力は国際的に見ても高い水準にあることはよく知られています。毎年公表される英国教育専門誌タイムス・ハイアー・エデューケーションの世界大学ランキングでは、本学の学術研究水準は国内7位、特に文献引用、つまり教員の書いた学術論文が国内外一線の研究者にどれだけ参照されるかの分野では、世界一位です。国際的に高い評価を受けている先生が本学では如何に多いかの指標・パラメータだと考えて頂ければ結構です。こうした先生は研究においても、そして日々の講義でも、そして卒論生・大学院生の指導でも輝く存在です。学生はそうした先生の姿に憧れて育っていくものです。こうした研究力に優れた教員が高い水準の教育を牽引していく、それが本学の在り方だと、誇りを持って入学生にお伝えしておきたいと思います。どうぞ頑張ってついてきて来てください。

 大学院に入学を果たされた諸君へのメッセージです。メッセージというより、小生の人生から振り返った経験談です。
 小生も大学教員として採用される前に、大学院修士課程、博士課程を経ました。そしてその思い出は、人生のなかでも全力で勉強に取り組めた得難い期間であったということです。こんなに勉強に集中した、又、集中できた期間はなかったと今振り返ります。4年間の学部を経て、自分が最も集中できる分野に出会うことができ、そのやりがいのあると感じることのできる分野の学習、未知の分野への挑戦に何の憂いもなく、集中できた幸せな時代だったと振り返ることができます。随分、先端論文も読みましたし、講義では聞くことのできない専門知識やコンピュータプログラミングの技術などの分野も独学で学びました。我が尊敬する師匠には失礼ではありますが、自分が選んだ特定の分野では師匠を凌ぐ独自の学術領域を拓けたと自負しています。もっとも、それが、Master's Degree、 Doctor's Degree を取得するということではありますが。
 申し上げたいのは、それ以前、それ以後にもまして、研究・勉強に純粋に打ち込める時期だということです。この時期の集中が、その後の小生を形作ったと自覚しています。何にも代えがたい貴重で、しかも専門家としてのその後の人生の基礎を創る期間だと認識していただきたいと考えます。奮闘を期待します。

 本学は世界有数の都市、東京都が設置する唯一の公立大学です。東京は人口規模では世界一ですが、都知事は安全・安心の意味でも、環境・文化の側面でも世界一の都市を目指す、と言っておられます。つまり本学は世界一の都市が設立する唯一の公立大学です。
 世界規模的にみても、その人口の約7割は都市に居住する、といわれています。そこで、東京都が設置する本学の主要な任務は「大都市社会における人間社会の理想像の追求」におかれています。総合大学としての幅広い基礎研究分野の土台に立脚しつつ、先端的な都市課題研究にも東京都との連携の元に果敢に挑戦しています。又、世界のトップ都市としての東京都が設置している大学として、高い水準の教育・研究はもとより、国際化、ダイバーシティー、つまり男女共同参画を始めとして障碍の有無や国籍を超えて多様な価値観を認め合う社会の構築のことですが、これらの分野でも本学はトップユニバーシティーであり続けたいと日々奮闘し、着実な成果を挙げてきています。
 しかし一方、我が国は、人口減少、かつて経験したことのない人口高齢化、加えて巨額の公的債務、そして拡大しつつある相対的貧困層などの困難に直面しています。眼を世界に転じると、地域紛争、内戦、テロリズム、そして貧困の拡大などの困難が数多く現象しています。こうした困難を克服し、誰もが人間としての尊厳をもって生きていくことが出来る社会を構築していくためには、正義感と高い倫理観をバックボーンとした、若く、強く、しなやかな知性を持った若者の力が必要です。それが皆さんです。共に学びましょう。

 明日からの大学生活を楽しみながら、そして学んでください。健闘を期待します。
 本日は誠におめでとうございます。

平成27年4月5日 首都大学東京 学長 上野淳

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