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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
中村 一史 准教授

中村 一史 准教授
H30再編後の所属
都市環境学部 都市基盤環境学科
中村 一史 准教授 【教員紹介】
キーワード:
橋, 老朽化, FRP

「橋」の長寿命化には、早期発見・早期治療のメンテナンスを!

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橋はあって当たり前なのか?

身近にある川には、たいてい橋が架かっていて、自由に渡ることができます。橋を渡るときに、私たちは特に意識することもなく、空気のように当たり前にある存在だと考えています。しかし、橋を架けるためには、多くの技術と労力が費やされているのです。近年、トンネルや橋など、公共の構造物の老朽化がたびたび社会問題となっており、これによって事故が引き起こされる場合もあります。

橋を補修する方法とは

橋には、材料別に大きく分けて、コンクリート製のものと、鋼鉄など金属製(鋼製とよびます)のものがあります。どちらもメンテナンスをしなければ、長年の間に劣化することは避けられず、危険な状態となってしまいます。逆に言えば、古いから危険というわけではなく、きちんとメンテナンスさえすれば、古い橋も長持ちするということです。
鋼製の橋では、サビの発生や金属疲労が問題となります。交通渋滞の多い場所にある橋には、車の重さが繰り返しかかるため、金属疲労を起こしやすく、き裂が生じることもあります。橋の劣化を防ぎ、劣化した箇所を補修するために、今注目を集めている素材が、FRP(繊維強化プラスチック)です。接着剤でFRPを、橋脚に巻きつけたり、劣化した金属の上から貼り付けたりすることで、補強することができます。

橋を造ることから長持ちさせることを考える時代

1990年代頃まで、日本では多くの橋が造られ、いかに長く大きな橋を造るかという技術開発が注目されてきました。しかし現在では、いかに長持ちする橋を造るか、いかに今ある橋を長持ちさせるか、ということが研究の中心となってきています。橋を長持ちさせるコツは、「予防保全」です。人間の病気に対して、早期発見、早期治療が有効なのと同様で、よくない箇所を早く見つけて早く対策することが大切なのです。そのためには、橋が健全かどうかを確認するための検査技術や、検査結果に基づいた適切な診断と処置(補修・補強)が必要で、これを定期的に行って、回していくことが重要になります。

橋を造ったり補強したりするための素材「FRP」とは?

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軽量で丈夫な「FRP」

橋の材料は、主にコンクリート製か鋼製ですが、新たに3番目の素材として、FRP(繊維強化プラスチック)が注目されるようになってきました。FRPとは、プラスチックにガラス繊維や炭素繊維などを入れて強度を増した素材で、軽量かつ丈夫で、腐食せず加工しやすいなどの点から、テニスラケットやゴルフクラブのシャフト、船や航空機の材料など、以前からさまざまな用途に使われてきました。なかでも炭素繊維を用いたFRPの一種、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)では、繊維方向への引張強度は鉄の数倍です。2000年頃から土木の分野でも使われ始め、橋の補強材・補修材としても普及しつつあります。

橋を補強する素材として実力を発揮

日本では、長さ2m以上の橋は、5年ごとに近接目視による検査が義務づけられています。コンクリート製や鋼製の橋は、水、塩分、二酸化炭素、紫外線などの環境作用や車両の走行、風・地震などの荷重作用などにより劣化し、危険な状態になることがあるためです。そうなった橋を補修するため、あるいは劣化を予防するために、FRPが使用されています。シート上のCFRPをコンクリート製の橋脚に巻きつけることで、耐震補強ができます。鋼製の橋梁で、腐食で欠損が生じた部分にCFRPを接着することで、橋ができた時の性能まで回復させることも可能です。

FRPの将来性

技術的にはFRPで大きな橋を造ることも可能ですが、1本の橋を丸ごとFRPで造るのは、材料コストがかかりすぎる場合があります。小規模な歩道橋は幾つか架けられていますが、実用として現在考えられているのは、補強材としての使用のほか、橋の検査路をFRPで造るというものです。検査路とは、橋に近づいて目視で点検するために、橋に取り付けられる、検査員のための通路ですが、そうした構造物ならFRPが向いていると考えられています。コンクリートや鋼鉄と組み合わせて使うことのできるFRPは、今後も橋の材料のひとつとして、可能性を秘めているといえるでしょう。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

高校で一生懸命勉強をしている今、それが何の役に立つかということは見えていないかもしれません。しかし、今は、「基礎体力」をつけているのだと考えてはどうでしょう。どう役に立つのか今はわからなくても、コツコツと勉強して基礎の土台がしっかりと築かれていれば、あなたの可能性や視野は広がることでしょう。
高校では「問題を解いて正解を出す」ことがほとんどですが、社会に出ると「正解のない問題に対して答えを見つける」ことが求められます。今はそのためのトレーニングだと考えて、がんばってください。


夢ナビ編集部監修

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