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多幾山 法子 准教授

多幾山 法子 准教授

都市環境学部 建築都市コース
多幾山 法子 准教授

キーワード:
木造建築, 耐震, 補修

伝統的な建築物を地震から守れ!

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文化財建築を守る難しさ

日本に古くからある木造による建築物や、明治時代に多く造られた煉瓦造の建物は、そのままでは、大地震などで倒壊してしまう恐れがあります。文化財建築を地震や老朽化などから守るために、補修をして、保存・再生するための技術が研究されています。こうした研究の難しいところは、文化財というものは、極力建てられた当時の外観を損なわないようにしなければならないという点です。

木だけで造る、伝統木造建築

伝統的な神社仏閣だけでなく、古い日本の木造建築は、木の組み合わせだけで造られ、金属や接着剤などは使用されていませんでした。木材に突起部分「ほぞ」を造り、他方の木材の「ほぞ穴」に差し込み、それを「鼻栓」や「込栓」と呼ばれる栓で留めるなどの構造を使って、接合部が巧みに組み上げられているのです。ただ、大地震の際などには、木造建築はその接合部から壊れていくことが多く、1995年の阪神・淡路大震災では、5000人以上の犠牲者のうち、9割近くの人が建物の倒壊により命を落としていると報告されています。
その一方で、日本各地に、度重なる地震を経てもなお倒壊することなく現存している伝統木造建築が多数あります。伝統木造建築の倒壊を防ぐためには、現存する建築物を調査し、どういう構造が壊れにくいのかを分析したうえで、補修をする必要があります。

フィリピン、ネパールの文化財を守れ!

フィリピンでは2013年に、ネパールでは2015年に大地震があり、多数の犠牲者が出ました。フィリピンでは教会建築などの文化財が被害を受け、ネパールではユネスコの世界遺産に登録されている建造物が倒壊し、人が生き埋めになりました。こうした事態に対し、日本から研究チームが現地へ行き、文化財保全のための調査・研究をしています。海外では、建築法も建材の材質や安全基準も日本とは異なるため、日本での研究がそのまま使えるわけではありませんが、基本となる理論を応用し、世界の文化財を守るための努力も続けられているのです。

木造建築の耐震性はどうすれば高められるのか?

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さまざまな建築物の材質・工法

日本には古くからある木造建築、明治時代に多く造られたレンガ造、ビルなどに使われる鉄筋コンクリート造など、さまざまな材質や工法が使われています。木造建築でも、昔の日本家屋や神社仏閣に用いられた伝統木造建築と、現在一般的に建てられている木造建築は違います。伝統木造建築は、金属や接着剤を使わず木と木の組み合わせだけで造られていますが、現在主流となっている「在来軸組木造」は、木の接合部を金物などで補強する建築工法です。

在来軸組木造の弱点

木造家屋は、柱と、梁(はり)など水平方向にかける横架材の組み合わせに、固い壁材をつけることで強度を保っています。近年では、耐震性を高めるために、より強い壁を造ろうとする傾向がありますが、強い壁を1カ所に集中させると、大きな地震の際に、その壁は壊れないものの、壁のない部分(開口部)が動くため、ねじれによって建物全体が倒壊してしまいます。
建物の倒壊がどういう条件で起こるのかを調べるために、既存の木造建築物の調査や、モデルを使った耐震実験などで耐震性を調べていきます。実験からもわかることですが、在来軸組木造は、金属を使用した固い構造のため、大きな荷重に耐えることができる一方で、限界を超えると一気に壊れてしまいます。伝統木造建築の場合は、柔らかい構造であるため変形性能が高く、地震の揺れをある程度吸収することができます。それぞれの工法の長所・短所を知り、より適した耐震構造を考えることが大切です。

人命を守るための耐震構造研究の重要性

東京の山手線の周辺には、関東大震災の時、火災から逃れた古い在来軸組木造が多数残っている「木造密集地域」があります。こうした古い住宅は何度も増改築を繰り返しているものが多く、全体のバランスが悪くなって壊れやすいなどの問題があります。地震の際、家屋の倒壊から人命を守るためにも、その構造と特性を知るための研究は、ますます重要なものとなっています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

私は、木質構造や、古い建物を保存・再生する「建築保全再生学」などを専門に研究しています。日本は地震が多く、木造建物の倒壊による犠牲者が多数出ています。また、かつて想定されていたより規模の大きな地震が頻発しています。私は、既存の建物の耐震性を向上させることや耐震性のより高い建物を新築することが、人命を守るために大切だと考え、日々研究を行っています。できるだけ多くの人命を守れるように努力したいという意欲のあるあなたと、一緒に研究ができたらいいなと期待しています。


夢ナビ編集部監修

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