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山口 素夫 教授

都市環境学部 分子応用化学コース
山口 素夫 教授

キーワード:
金属錯体, 触媒, 分子

人工の酵素ができる? 金属錯体が秘める可能性とは?

光や熱、電気で色が変化する金属錯体

金属に有機化合物などの物質が結合した化合物「金属錯体(さくたい)」には、従来の研究では想像できなかったような特性が現れる場合があります。
例えば、光を当てると色が変化するフォトクロミック錯体と呼ばれる錯体は、日射しの強い場所で色が濃くなるサングラスなどに利用されています。熱が加わることで色が変わるサーモクロミック錯体は、注ぐ液体の温度によって色が変わるコップなどに使われています。ほかにも電圧によって色が変化するエレクトロクロミック錯体などもあり、新しい分子サイズのセンサーやスイッチなど、機能性材料としてさまざまな分野での応用が考えられています。

ゲスト分子を取り込むポケットを持つ錯体

金属錯体の研究分野で新たに期待されているのが、「ホスト-ゲスト錯体」についての研究です。これは、ルテニウムを用いた金属錯体で4つの分子が環状につながる構造を持つものを合成し、その環状になった部分の内側をポケットのように使って、別のゲスト分子を取り込めるようにしようというものです。ルテニウムという金属の特性から、環状ホストにゲスト分子を取り込ませ、このホスト-ゲスト錯体に光をあてるとゲスト分子の光反応を促進することができます。つまり、ゲスト分子の光反応の触媒にホスト分子がなるのです。私たちの体内にある酵素もポケットを持ち、取り込んだ分子の反応を促進するので、このような人工酵素の開発は今後さらに発展することが期待されています。

経験と創意工夫によって見出される新たな可能性

物質の合成方法には無数の選択肢があるため、触媒としての金属錯体の研究では目的とする反応だけをスマートに起こさせるため多くの試行錯誤を繰り返さねばなりません。しかし、試行錯誤の中で積み重ねた経験と創意工夫によって、まったく新しい可能性が見えてくる場合もあります。分子レベルで考えながら、すべてを自分たち自身で工夫し組み立てながら取り組むものづくりこそ、金属錯体の研究の醍醐味と言えるでしょう。

環境にやさしい「グリーンケミストリー」とは?

さまざまな分野への応用が期待される金属錯体

金属錯体(さくたい)とは、金属に有機化合物など何らかの物質が結合した構造を持つ化合物のことです。身近な例では、私たちの身体を流れる血液の赤血球にはヘモグロビンという鉄の入った錯体があり、鉄に酸素分子が結合することで肺から体中へ酸素が供給されます。金属錯体は金属と有機化合物の組み合わせで単独の場合とは異なる性質を持つようになるため、さまざまな分野での応用が期待されていて、日本でも盛んに研究が進められています。

新しい物質の創造につながる可能性

例えば、天然ガスに含まれているメタンと酸素を反応させてメタノールを生成しようとすると、非常に高温・高圧下での反応になってしまいます。しかし、ここで金属錯体を酸化触媒としてこの反応に利用すると、より温和な条件で反応させることが可能になると期待されています。このように金属錯体には、物質の反応を促進させる触媒として機能して目的とする反応のみの実現を助け、不要な副生物ができないようにする働きがあります。
このような金属錯体を用いた触媒を作り出す研究には難しい面もあり、実験で試行錯誤をくりかえす中で、さまざまな経験を蓄積していく必要があります。しかしこの研究には、物質を作るための新しい手法の発見や、新たな性質や機能を持つ物質の創造につながる可能性が秘められています。

環境にやさしい社会を実現するための力

現代の化学の研究において大きな目標に掲げられているのが「グリーンケミストリー」です。廃棄物を出さず、不要なものを作らず、欲しいものだけを作り出す新しい化学であるグリーンケミストリーの開発は、地球環境にこれ以上負荷をかけず持続性のある社会を実現するためにも非常に重要です。そうした技術の実現には、金属錯体を活用した触媒の研究をさらに進めていくことが不可欠になります。分子応用化学の分野でこうした「働く分子」「役に立つ分子」を開発していくことは、これからの私たちの社会そのものを支えていく力になっていくのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

高校で勉強する化学、特に有機化学は、暗記科目になってしまっています。私も実は、高校の時は化学があまり好きではなかったのですが、大学に入って化学を基本原理から学び、分子レベルで物質を理解することができるようになり、化学が非常に好きになりました。大学で化学を勉強すると、化学が好きな人はもっと好きになりますし、化学嫌いの人もきっと好きになってくれると思います。首都大学東京では、社会の役に立つものづくりをめざして研究をしています。自分でものをつくりたいという人は、ぜひ本学で化学の勉強をしてください。

夢ナビ編集部監修

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