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吉田 博久 教授

吉田 博久 教授

都市環境学部 分子応用化学コース
吉田 博久 教授

キーワード:
除染, センサー, 放射線物質

目に見えない放射性物質を見えるようにするセンサー

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ナノサイズの容器で分子を制御

化学反応実験の際には試験管やビーカー、フラスコを容器として使います。その容器を非常に小さく、分子とほぼ同じナノサイズにすると、分子は容器の中で身動きできなくなるため、化合物の大きさや反応の方向を制御できるようになります。規則正しく配列させたナノサイズの容器中で反応させることで、分子や化合物の機能を効率よく発揮させることができます。

効率的な除染のために

この技術の応用例として挙げられるのが、放射線に反応する蛍光粒子を並べた、放射性物質を感知するセンサーです。光により可視化されるため、目に見えない放射性物質がどこにどれぐらいの量があるのか、詳しくわかるようになります。2011年以降、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質汚染が社会問題となっていますが、実は空間線量の高い地域でも土壌の深さ数センチ、樹木ならば樹皮程度しか汚染されていないケースも多くあります。このセンサーであれば汚染部位を特定できますから、効率的な除染が可能になるのです。またこのセンサーは空間分解能が高いため、放射性物質の分布を細胞レベルで追える可能性もあります。そうなると食品の内部でどう放射性物質が移行するのか、例えば玄米は糠(ぬか)と胚芽に放射性物質が蓄積されるのですが、どのようなメカニズムでそこに至るのか調べることもできるのです。

写真からビデオカメラへ

課題と言えるのはまだこのセンサーが小さな面積でしか作れない点と、もともとX線のセンサーとして考えられていたため、γ(ガンマ)線を検出するには時間のかかることです。現在は、1ショットずつ写真を撮るようなイメージですが、これをビデオカメラのようにリアルタイムで画像化できれば、さらに効率はよくなるはずです。
今後除染を進めていく上で、汚染地域すべての樹木や土壌、瓦礫(がれき)を丸ごと処理することは非現実的ですから、汚染部位を判別する技術は必要不可欠だと言えます。

原子や分子の仕組みがわかれば、新機能シャンプーも作れる?

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乾燥した肌が水につけても戻らない理由

人間の体は環境の変化により、さまざまな影響を受けます。特に皮膚や髪の毛はその影響を受けやすく、例えば大気の乾燥や日焼けにより、乾燥肌になったり枝毛になったりといったダメージになって現れます。しかし、カサカサになった手を水につけても元には戻りません。人間の体もたくさんの分子の集合体であり、目に見えない細胞や分子レベルでダメージを受けているからです。つまり、水分をキャッチする成分や構造そのものが失われてしまったため、水につけても皮膚が水分を保持できなくなっているのです。

有効成分はどう浸透していくのか

傷んだ肌や髪の毛を元通りにし、またダメージから守るために使われるのがスキンローションやヘアシャンプー、コンディショナーです。これらの製品には水分を保持するセラミドを補う成分、剥がれた角質の表面を接着する成分などが混ぜられているのですが、各成分はそれぞれ役割が違い、皮膚や毛髪の中を通る経路も異なります。そのため、有効成分をただ入れるだけでは不十分で、いかにして必要とする場所にたどり着かせるかが大事になってくるのです。そこで各メーカーは成分が皮膚や毛髪の中でどう浸透していくかを観察し、製品にフィードバックさせています。

国の施設を使って新製品を開発

原子や分子の仕組みを知るにはさまざまな方法がありますが、代表的なものが放射光を使った解析です。特に兵庫県にあるSPring-8という大型放射光施設は世界最高レベルの解析が可能なため、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの微粒子分析やインフルエンザ新薬に繋がるタンパク質の構造解析など、最先端の研究に使われています。この施設は何十もの研究装置が利用可能であり、広く国内外の研究者に門戸を開いていることから、ガムやタイヤ、ヘアケアやスキンケアの製品開発にも使われるなど、身近な生活の役にも立っているのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

山を登るには、いくつものルートがあります。最大の目的は山頂に行くことでしょうが、ルートによっては道中で美しい植物や動物に出会い、思わぬ喜びがもたらされることがあります。研究にも似たところがあり、目的に向かうためのデータをさまざまな観点から眺めていると、思わぬ発見があるものです。そうしたことに気づく視点を培うためには、ぜひ多くのことに関心を持ってください。物事をさまざまな視点から眺めることができれば、研究だけに限らず世の中に出てからも、きっとあなたの役に立つはずです。


夢ナビ編集部監修

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