本文へ移動します

荒畑 恵美子 准教授

荒畑 恵美子 准教授

都市教養学部 理工学系 物理学コース
荒畑 恵美子 准教授

キーワード:
超伝導(超電導), 超流動, リニアモーターカー

「超伝導」研究のカギを握る、「超流動」とは?

イメージ1
容器から液体が流れ出す「超流動」

液体ヘリウムを絶対零度(-273℃)に近い超低温にした時、容器から液体が外へ流れ出す現象が起きます。これを「超流動」と呼びます。どういうことかと言うと、超低温のもとでは、液体や気体の粘性、つまり結びつこうとする力がゼロになってしまうのです。粘性がゼロになると、気体や液体が拡散してしまいます。このように、物質は、ごく低温にすると、常温の時とは異なる物性(ものの性質)を示すことがあるのです。

超低温を作る技術

通常、気体は冷却すると液体になり、さらに固体になりますが、物質によっては気体のまま超低温にすることが可能です。気体から液体に変わる温度(沸点)は、圧力によって変動するので、圧力を調節しながら冷却するのです。
超低温に冷却するには、高い技術が必要です。冷却とは、言い換えれば物質の運動エネルギーを奪うことです。つまり、物質の分子が動かなくなるほど温度は下がります。近年では、レーザーで分子の動きを止めて冷却する「レーザー冷却」という方法が開発され、非常に低温の状態を作り出すことができるようになっています。こうして作られた「冷却原子気体」と呼ばれる特殊な気体を利用し、さまざまな研究が進められています。

「超流動」から「超伝導」を探る

超流動と類似した原理の現象が、金属などの固体でも起こることがあります。超低温下で電気抵抗がゼロになる、「超伝導」です。この物性を利用することで、リニアモーターカーやMRI(核磁気共鳴画像)などの新しい技術が開発されています。超伝導は、比較的高温の状態でも起こることがありますが、実は、なぜそういうことが起こるのか、科学的には解明されていません。
超伝導は、実験・理論ともに非常に複雑な状況を扱う必要があります。その一方で超流動の実験では、冷却原子気体で原子が規則的に並んでいる状態を人工的に作り出せるため、理論と実験の整合性が得やすいという利点があります。超流動を調べることで、超伝導現象の解明につながることが期待されています。

夢の「室温超伝導」への挑戦

イメージ1
超伝導研究の歴史と進歩

現在、リニアモーターカーやMRI(核磁気共鳴画像)などへの応用で脚光を浴びている超伝導は、ある物質を絶対零度(-273℃)に近い超低温にすると、物質内の電気抵抗がゼロになるという現象です。この現象自体は、1911年に発見されたものですが、それが実用化されるまでには、長い年月が必要でした。
1986年には、それほど超低温でなくても超伝導現象が起きる「高温超伝導」が発見されました。「高温」と言っても超低温に比べればの話で、実現できているのは、-200~-100℃という、まだかなりの低温です。超低温の環境を作るのは非常に難しくコストもかかるので、なるべく高温で超伝導が実現できれば、実用化への大きな進歩となります。こうして超伝導の高温化の研究が世界中で行われ、将来的には常温での超伝導、いわゆる「室温超伝導」も実現できるのではないかと考えられています。

高温超伝導はまだ解明されていない?

超伝導物質には、電気抵抗がゼロになる以外にも、磁力線に対して反発するという性質があり、リニアモーターカーでは、この反発力を生かし、車両を線路から浮かせて走らせることができます。リニアでは、やはり高温超伝導の技術が使われていますが、実は、なぜ高温でも超伝導が起こるのかということに関しては、科学的にまだはっきりとは解明されていないのです。その原理が解明されれば、室温超伝導への道が開けるかもしれません。

「超流動」から「超伝導」を探る

超伝導は、実験が非常に難しい研究であるため、理論的な扱いも複雑になります。ですが、超伝導と同じような現象として、超低温にした液体や気体の粘性がゼロになる「超流動」という現象が発見されています。この超流動は、超伝導と類似した原理で起こるものと考えられており、超伝導研究者からも注目されています。
超流動は、超伝導より実験と理論が整合しやすいので、超流動現象を解明することが、超伝導の解明への近道であると期待されているのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

身近に起きるさまざまな現象について、「なぜこうなるのだろう?」と疑問に思う人は多いでしょう。物理では、そういったことを、とことんまで突きつめられるかどうかが大事なのです。私は、高校の理系科目の得意・不得意は、実はあまり関係ないのではないかと思っています。私も高校の時、理系科目は苦手でした。もしあなたが、物理は好きだけれどもその他の理系科目が苦手だからという理由で、進むのをためらっているなら、それは思い込みかもしれません。
自分の頭でとことん考えること、それが研究には一番重要な要素だと考えています。


夢ナビ編集部監修

ページトップへ