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慈道 大介 准教授

慈道 大介 准教授

都市教養学部 理工学系 物理学コース
慈道 大介 准教授

キーワード:
ハドロン, 素粒子, クォーク

ハドロンの不思議な世界 ~クォークは単体では見つけられない?~

慈道 大介 准教授
ハドロンとは?

この世界に存在する物質は、「素粒子」と呼ばれる粒子によって構成されています。現在までに見つかっている素粒子には、6種類のクォークと、レプトンと呼ばれる、電子、タウ、ミューオン、3種類のニュートリノがあります。
複数のクォークが結びついて構成される粒子のことを、「ハドロン」と呼びます。原子核を構成する陽子や中性子は3つのクォークから成り「バリオン」と呼ばれます。中間子はクォークと反クォークから成っていて「メソン」と呼ばれます。

閉じ込められているクォーク

自然界には、重力、電磁気力、強い力、弱い力という4つの力が存在します。ハドロンを構成するクォーク同士を結びつけるのは、強い力です。強い力は、グルーオンという粒子によって伝えられます。クォークは、それら自体が存在することは確かめられていますが、クォークそのものをハドロンから取り出して単体で見つけることはできていません。これは「クォークの閉じ込め問題」と呼ばれています。
この問題の原因はいまだに多くの謎に包まれていますが、クォークやグルーオンは、赤、青、緑などにたとえられるカラーを持っていて、それらが組み合わさって白色になる状態でしか存在できないと考えられています。ハドロンからクォークを引き離そうとしても、グルーオンがゴムひものように伸びた後、切れたところに新たにクォークと反クォークができて、2つのハドロンに分かれてしまうのです。

加速器実験によって進む素粒子の研究

ハドロンは、それらを構成するクォークの種類の組み合わせ方だけでなく、内部でクォークがどのような動きをしているのかによっても違いが生じます。加速器による実験によって、これまでに300種類以上ものハドロンが発見されています。また、今まであまり見つかっていない4つ以上のクォークから成るエキゾチックハドロンという粒子の存在についても、盛んに研究が行われています。素粒子の世界には、まだ解き明かされていない謎が残されているのです。

陽子の質量の謎 ~ハドロンの質量は「強い力」から生まれる?~

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陽子の質量はどこから来た?

陽子は、アップクォーク2つとダウンクォーク1つで作られています。陽子の質量はクォーク3つ分と思いますが、ヒッグス粒子の作り出すアップクォークとダウンクォークの質量はほとんどゼロです。「神の粒子」ヒッグス粒子も陽子の質量の数%しか説明しません。では、陽子の質量はどこから来たのでしょうか。

「対称性の自発的破れ」とは?

「対称性」とは、ある特定の条件で変換を行っても変わらない性質のことを指します。ボールのような球形の物体を回転させても、回転前と同じ状態に見える、といったことです。クォークをはじめとする素粒子は、「スピン」と呼ばれる量を持ちます。スピンの向きが運動の方向と同じなら右巻き、逆なら左巻きになります。もし、クォークの質量がゼロであれば、その向きを変えることはできず、理論上では右か左かに完全に分かれてしまいます。しかし、現実は、クォークには質量があり、両方の向きが混在する状態です。この矛盾を解く鍵が「対称性の自発的破れ」で、真空のようにエネルギーが最低の環境が引き起こす現象です。2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎博士は、この分野の研究の先駆者として知られています。

謎に包まれた真空の構造と質量生成のメカニズム

「対称性の自発的破れ」について考えていくと、そもそも「真空」とはどういった状態なのか、という点に興味が湧きます。たとえ、そこに粒子がなくエネルギーが最低の状態であっても、力がまったくない状態ではありません。真空に力があるから質量がほとんどゼロだったクォークに強い力によって質量が生まれます。真空とは何かを考えていくと、ビッグバンで宇宙が誕生した時、非常に高温で高密度の環境下で素粒子が自由に飛び交う状態から、クォークが結合してハドロンが形成されていった「クォーク・ハドロン相転移」という現象自体が本当に起こったことなのか、という謎が生まれます。
私たちの世界を構成する素粒子については、まだわかっていないことが無数に存在しています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

私は「もののからくり」が知りたくて、自然科学、特に物理学に興味を持ちました。物理学はさまざまな疑問に明快な論理で答えてくれます。研究とはすでに知られていることを勉強するのではなく、誰も知らない未知の分野に挑戦することです。着眼点も取り組み方も千差万別で、誰にもよい研究ができる可能性があります。研究で一番大事なのは、素朴な疑問を、解ける問題に還元することです。疑問に思ったことはとことん調べてみてください。案外知られている事実が多くないことに気づくかもしれません。そこが研究の入り口です。


夢ナビ編集部監修

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