本文へ移動します

兒玉 健 准教授

兒玉 健 准教授

都市教養学部 理工学系
化学コース
兒玉 健 准教授

キーワード:
フラーレン, 炭素, ナノ

10億分の1メートルのサッカーボール! 「フラーレン」って何?

イメージ1
直径は、わずか10億分の1メートル

同素体は同じ1種類の元素からできていますが、性質は異なります。例えば炭素(C)の同素体であるダイヤモンドと鉛筆の芯などに使われている黒鉛(グラファイト)では、固さが全く異なりますが、これは炭素原子同士のつながり方が異なっているからです。
炭素の新しい同素体として、1985年に「C60」に代表される球殻状分子「フラーレン」、1991年に筒状物質「カーボンナノチューブ」が発見されました。これらの直径はわずか約1ナノメートル(10億分の1メートル)しかなく、「ナノ炭素」とも呼ばれています。

宇宙から始まったフラーレンの研究

フラーレンの発見は宇宙に関する研究から始まりました。1970年代、宇宙空間の分子について研究していたイギリスの研究者・クロトーは、炭素が直線状に複数つながったものが星間空間に存在していることを突き止めました。1985年、直線状炭素分子について、より詳しく解き明かすため、クロトーはアメリカの研究者・スモーリーやカールらと、グラファイトを用いて「レーザー蒸発クラスター生成実験」を行いました。その結果、偶然にも、炭素原子が60個からなる物質「C60」がたくさん生成されることが判明したのです。

それはまさに、ナノサイズのサッカーボール

3人の研究者はどうすれば60個の炭素で安定な形になるのか考えた結果、五角形と六角形で構成されたサッカーボールと同じ多面体構造を取ればよいのではないかとひらめきます。その着想の元の一つになった建築物を設計した建築家バックミンスター・フラーにちなんで、「C60」にはバックミンスターフラーレンという名が付けられ、後に球殻状炭素分子はフラーレンと呼ばれるようになりました。その後、1990年にアメリカとドイツの研究チームがC60の大量合成法を発見し、C60が本当にサッカーボールの形をしていることが確かめられました。そして1996年、クロトーら3人にノーベル化学賞が贈られたのです。

極小の炭素分子「フラーレン」が、カプセルになる?

イメージ1
「かご」状のフラーレンの中に何か入れられる?

10億分の1メートル、という極小の直径を持つ炭素分子「フラーレン」の中は真空になっており、発見当初から、「カプセル」のように原子を中に入れることができるのではないかと期待されていました。C60の大量合成法が発見されてまもなく、金属原子が入ったフラーレン「金属内包フラーレン」も合成され、その性質が調べられるようになりました。

内包フラーレンはどうやって作るのか

内包フラーレンを作るにはいくつかの方法があります。その一つは、内包させたい金属を混ぜた炭素棒を作り、その炭素棒を放電して作る「アーク放電法」です。金属内包フラーレンは、放電の結果生成したススから取り出されます。これまでに、さまざまな金属がフラーレンに内包されることがわかっていますが、金属の種類によっては内包されないものもあり、その理由については現在も研究が進められています。ほかにも、高温高圧下で希ガスをフラーレンに押し込んで入れる方法や、フラーレンに化学的な方法で穴を空け、水素分子などを注入した後に閉じる「分子手術」的な方法も行われています。

さまざまな応用に期待!

内包フラーレンにおいては、原子が1個だけではなく、2個以上入るものも知られています。例えば、C60より大きなC80に2個の金属原子が中に入ったものも存在します。磁石の性質を持った原子を2個入れた場合に、その磁石同士がどのように影響を及ぼし合うかなどの研究も行われています。また、発光体としての性質を持つ金属もあり、さまざまな性質を持った金属原子を組み合わせることで、複合的な機能を持ったフラーレンができるのではないかと期待されています。
まだまだわからないこともたくさんありますが、フラーレンを「カプセル」として、いろいろなものを内包させていく研究は大きな可能性を秘めており、これからも加速していくことでしょう。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

勉強や研究はいつまで続けても終わりがありません。失敗することもありますが、いつまでも好奇心を失わず、あきらめずに前へ進んでいくことが大事だと思っています。
私のグループではフラーレン(球殻状構造の炭素同素体)に興味を持った人だけでなく、物理化学の理論的なアプローチが好きな人や、地道な作業で研究データを解析するのが得意な人など、さまざまな人が日々、研究に打ち込んでいます。あなたも大学で何か興味を持って取り組める対象を見つけてください。


夢ナビ編集部監修

ページトップへ