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三島 正規 准教授

三島 正規 准教授

都市教養学部 理工学系 化学コース
三島 正規 准教授

キーワード:
タンパク質, DNA, 新薬

タンパク質の立体構造が医学を進歩させる

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生命の重要要素「タンパク質」

生物の体内では、タンパク質が重要な働きをしています。タンパク質の一種である酵素は、ほかのタンパク質などと結びつくことにより、体内でさまざまな機能を発揮しますが、それには、酵素とタンパク質の形がうまくかみ合うことが必要です。つまり、あるタンパク質と同じような形の医薬品を作れば、酵素の働きを抑えたり、促進したりできるということです。タンパク質の立体構造を解明することが、新薬の開発につながるのです。

立体構造を解析する2つの方法

タンパク質の立体構造を解き明かす手段には、大きく分けて「X線結晶解析法」と「溶液NMR法」の2つがあります。X線結晶解析法は、タンパク質を結晶化させて固定し、解析を容易にする方法ですが、タンパク質の動きまではわからないという欠点があります。溶液NMR法は、医療現場で使われるMRIと同じ核磁気共鳴の原理を利用した方法で、溶液の状態で解析できるので、運動性なども含めた解析が可能です。
例えば、リボソームの立体構造は、X線結晶構造解析法によって解明され、リボソームによる遺伝情報の翻訳、すなわち遺伝情報に従ったアミノ酸合成が、正確に行われる仕組みが明らかになりました。また、DNAポリメラーゼという物質は、手のひらのような形の中に包み込むようにしてDNAの修復と複製を行うことが、その立体構造から判明しました。

解析をさまざまな分野に応用する

医薬品として使われているステロイド剤は、長期間使っていると効かなくなると言われています。最近の研究で、ステロイドによる刺激によって生まれたタンパク質が結合する過程で、遺伝子の発現を抑制するというメカニズムがわかってきました。その働きを抑えることができれば、ステロイド剤を長期間使用できるようになる可能性もあります。実は医薬品だけではありません。酵素には、水素が発生する反応を触媒するものも存在します。タンパク質の立体構造の解明は、さまざまな分野に応用が期待されているのです。

タンパク質の立体構造を解明し、生命現象の不思議を解き明かす

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ヤナギからできたアスピリン

解熱鎮痛薬として有名な「アスピリン」は、ヤナギの木に含まれる成分のひとつです。ヤナギの木に解熱鎮痛作用などがあるということは古くから知られていましたが、そのメカニズムは、ずっと後の時代に判明しました。アスピリンは、炎症を起こす酵素に結合することで、その働きを止めてしまうため、熱が下がるのです。これは、酵素の形、アスピリンの形の両方がわかることで明らかになりました。

タンパク質はどういう構造をしているか

このように、生命現象を分子レベルで研究していくと、体内で重要な働きをしているのは、生物の体を構成している、主に核酸やタンパク質などの高分子だということがわかります。これら核酸やタンパク質がどういう立体構造をしているのかを知ることが非常に大切です。例えば、1950年代には、遺伝情報を担うDNAは二重らせん構造をしているということが発見されました。それがわかったことにより、遺伝の仕組みが説明しやすくなり、遺伝子研究が飛躍的に進みました。タンパク質の一種である酵素は、ほかのタンパク質や化合物などと結合することにより、体内でさまざまな働きをします。鍵のように形の合う酵素が結合し、化学反応を促す触媒の役目を果たします。

コンピュータで新薬を合成できる時代

ですから、タンパク質の構造の解明は、新薬の開発にも非常に役立ちます。酵素と形の合う医薬品を作れば、さまざまな機能を持つ酵素の働きを抑えたり、促進したりできるようになるわけです。現在では、タンパク質の構造が解析できれば、そこに合う物質をコンピュータで探し、新薬を合成することができるようになりました。これを「ドラッグデザイン」と呼びますが、この手法で作られた薬品の1つが、インフルエンザ治療薬として知られるタミフルです。30年ほど前、ドラッグデザインという考え方が提唱された頃は、まだまだ夢物語と思われていましたが、今では、将来ますます発展する分野として期待されています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

生命現象を、分子とその構造によって解明するという「構造生物化学」という学問分野は、急速な発展を遂げています。
それには、ここ20年ほどの、コンピュータの発達と、遺伝子操作技術の進歩が大きく関係していると考えられています。2000年代には、ノーベル賞を受賞する研究が相次ぎ、その成果を世に知らしめました。構造生物化学は、将来性があり、とても魅力的な研究分野です。優秀な人材を欲しているこの分野を、ぜひあなたも学んでみませんか?


夢ナビ編集部監修

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