本文へ移動します

ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
内山 成憲 教授

内山 成憲 教授
H30再編後の所属
理学部 数理科学科
内山 成憲 教授 【教員紹介】
キーワード:
量子コンピュータ, 暗号, 個人情報

あなたの個人情報が守られているのは、「素数」のおかげ!?

イメージ1
「暗号」は現代社会に不可欠な技術

「暗号」と聞くと、スパイ映画や推理小説に出てくるような非日常的なものを想像するかもしれません。しかし、一般にやり取りする情報を第三者が理解できないようにする技術のことを暗号と言いますが、現代社会において、暗号はとても身近なものであり、日常生活を支える重要な技術として使われています。例えば、電子マネーやインターネットでの買い物などは、入力した個人情報が暗号化されて送られることで守られているからこそ、安全に利用できているのです。

素数の特性を利用した「RSA暗号」とは

代表的な暗号技術に「RSA暗号」というものがあります。このRSA暗号には、素数の特性が利用されています。ともに素数であるp、qを掛け算して合成数nを求める計算は、たとえp、qの数が大きくなっても、コンピュータを使えば高速でできます。しかし、反対にnを素因数分解してpとqを求める計算は、nの数が大きくなればなるほど、コンピュータを使っても困難になります。
この素数の特性を暗号に応用すれば、p、qを知っている者には復号できますが、それを知らない第三者には解読できない強力な暗号が作れるようになるのです。ちなみに、2の1000乗ほどの大きさの素数を掛け合わせた合成数を暗号に使用すれば、高速な計算機を用いても素因数分解に天文学的な時間を要するため、事実上解読は不可能になると考えられています。

現代暗号を支える数理科学

現在、情報セキュリティの世界で使われている暗号の安全性は、素因数分解問題などの整数論的な問題の計算困難さによって支えられています。ほかにも、楕円曲線暗号と呼ばれる代数曲線上の離散対数問題と呼ばれる問題の計算困難さに基づく暗号方式なども提案されており、さまざまな数理科学の問題が暗号に利用されています。このように、長い歴史を持つ数理科学の研究が現代暗号を支えているのです。

量子コンピュータでも解読が難しい次世代の暗号とは?

イメージ1
量子コンピュータで現行の暗号技術が無力化する?

今日の情報セキュリティの分野における暗号化の技術には「大きな数の素因数分解はコンピュータを使っても計算が難しい」という数学的な特性が利用されています。しかし、研究者の間では、並列処理による高速演算が可能な次世代のコンピュータ「量子コンピュータ」が実現すれば、大きな数の素因数分解の計算も簡単にできるようになり、現行の暗号が無力化してしまう可能性が指摘されています。そのため、現在、量子コンピュータでも解読困難な新しい暗号の開発が世界中で進められています。

量子コンピュータに対抗できる暗号を作るには

では、量子コンピュータに対抗できる暗号とは、どのようなものでしょうか? 現行の素因数分解に基づく暗号のように、数学を応用する暗号方式であれば、ベースとなっている数学の計算難易度が暗号の安全性に直結します。ですから逆に、量子コンピュータでも計算が難しいと思われるものをベースにすれば、それだけ解読困難な暗号ができるというわけです。

「組合せ問題」や「連立方程式」を暗号に

量子コンピュータへの対抗策として注目されているのが、「ナップサック問題」という組合せパズルを応用した暗号です。これは例えば「さまざまな大きさのピースを箱の中に隙間なく詰めるにはどうすればよいか」といった問題に基づく暗号であり、すべてのピースの組み合わせを試さなければならないため、計算が複雑になります。また、連立方程式を応用した暗号も量子コンピュータへの耐性が期待されています。コンピュータを使った連立方程式の計算は、1次式であればどれだけ変数を増やして複雑にしても簡単に計算できますが、次数を2次、3次と増やすと計算が難しくなります。
これらの数学の問題は、効率的なアルゴリズム(コンピュータで計算を行う際の手順)が今のところ知られていないため、量子コンピュータを用いても解読が難しい次世代の暗号への応用研究が進められています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

人生で、好きなことに好きなだけ時間をかけられる時期というのは、実は学生時代くらいしかありません。働き始めると、何かに没頭する時間を作ることがなかなか難しくなります。
ですから、あなたがすでに興味のある何かを見つけているなら、ぜひそれに夢中になってください。勉強でも、遊びでも、なんでもかまいません。今すぐ役に立つようなものでなくてもいいのです。とにかく自分が面白いと思うものに熱中する時間を大事にしてください。


夢ナビ編集部監修

ページトップへ