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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
西村 孝史 准教授

西村 孝史 准教授
H30再編後の所属
経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース
西村 孝史 准教授 【教員紹介】
キーワード:
ソーシャル・キャピタル, マネジメント, 人間関係

「人」にフォーカスして組織力を高める「人材マネジメント」

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企業の業績を高めるために

企業が業績を伸ばすためには、ヒト、カネ、モノ、情報などさまざまな資源が必要です。特に企業で働く「ヒト」の要素は重要です。一人ひとりの従業員がスキルを磨き、モチベーションを高め、しかも同じ方向をめざして力を合わせること、つまり各従業員の「能力」「意欲」「ベクトル」の3つの要素の掛け算が、企業のパフォーマンス向上には欠かせないのです。
この「能力×意欲×ベクトル」を高めるために何が必要なのか、何をしたらよいのかを探究するのが、「人材マネジメント」です。

個人だけでなく「チーム」に注目

これまで人材マネジメントの研究対象は、個人になりがちでした。個人にどのような仕組みやルール、福利厚生の制度を作れば、彼らのやる気があがるのかに関心が集まっていました。しかし近年、人材マネジメントの対象は、個人だけでなくチームのあり方や人間関係の構築にまで広がっています。
なぜなら、どんなに個人の能力やモチベーションを高めるための仕組みを作っても、職場の中で良好な人間関係が築けなければ、企業がめざす成果に結びつかないことがわかってきたからです。離職の理由の中で人間関係への不満が多いことも、こうした状況を物語っています。

「年功序列」から「成果主義」へ

この背景には日本企業の人事管理の仕組みの変化があります。かつて多くの日本企業では、勤続年数や年齢によって昇進・昇格・昇給する「年功序列」を中心に人事の仕組みを構築していました。この枠組みの中で先輩が後輩を教育・指導して成長させながら、上司と部下が同じ方向で一丸となって企業のミッション(使命)に取り組んできたのです。
しかし、バブルがはじけた1990年代以降、年功序列が崩れ、成果によって昇進や昇給が決まる「成果主義」が導入されました。その結果、社内での競争が激しくなり、企業はそれまであまり気にする必要がなかった人間関係の構築にこれまで以上に配慮しないといけなくなりました。人材マネジメントを通じた社内の人間関係の構築方法が求められているのです。

人材マネジメントにおける「ソーシャルキャピタル」の重要性とは?

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「ソーシャルキャピタル」とは何か

「ソーシャルキャピタル」は、ほかの学術用語と区別するために「社会関係資本」と訳されます。もともとは、社会学や政治学、開発経済学などの分野で使われていた概念で、「人と人との信頼関係や結びつきから得られる資源」を指します。
1990年代半ばにニューヨーク市長だったジュリアーノ氏は、当時、治安が悪かったニューヨークの地下鉄の落書きを消すことで治安を回復させました。もちろん落書きだけを取り締まっただけでなく、未成年者の喫煙、万引き、花火や爆竹など軽微な事案を見逃さずに対処し、周辺の環境を落ち着かせたことで、人々に安心感と信頼感を醸成して、治安の回復につなげることができたのです。ソーシャルキャピタルを利用した好例と言えるでしょう。

人材マネジメントとソーシャルキャピタル

このソーシャルキャピタルの考え方を経営学、特に人材マネジメントに応用する研究が行われています。人材マネジメントとは、企業が目標を達成するために、従業員のスキルやモチベーション、組織の力を高めることを研究する学問です。
従業員のスキルやモチベーションを高めるためには、個々人の能力を上げるだけではなく、職場の中の信頼関係の構築、すなわちソーシャルキャピタルの視点が必要かつ有効であることがわかってきたのです。

証拠に基づいた人事施策の実行へ

例えば、仕事で行き詰まったときに、相談できる人が社内にいる人、いない人、あるいは相談できる人が複数人いる人と、1人しかいない人では、仕事の進め方や成長の度合いに差が出てくる可能性があります。また、ずっと同じ部署にいる人と、さまざまな部署に異動した人では、身につくスキルや人間関係の多様さに違いが出てきます。
こうした働いている人にとっては肌感覚でわかっていても、理論的にはわからない事例や実態を把握し、分析して、「社内で信頼できる人を作り上げる仕組みを構築すること」「異動の有無・時期・タイミングを最適化すること」も、人材マネジメントの重要な研究テーマなのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

人が企業の中で成果をあげるために必要な要素は、「能力・意欲・ベクトル」の3つで、しかもこれらは掛け算で考える必要があります。掛け算なのは3つのうち1つでも欠ければ、企業にとって大きな成果は望めないからです。「ヒューマンリソースマネジメンント」はこれらに働きかける学問です。ヒューマンリソースマネジメントは、細かい違いはありますが、大学によっては人材マネジメント、人的資源管理論などと言われます。この学問は企業だけでなく、部活動や学級活動、アルバイトの場面にも役立ちますから、ぜひ学んでみてください。


夢ナビ編集部監修

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