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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
三宅 昭良 教授

三宅 昭良 教授
H30再編後の所属
人文社会学部 人文学科
表象文化論教室
三宅 昭良 教授 【教員紹介】
キーワード:
古典, モダニズム, 演劇

モダニズム文学の中で、過去の作品が「引用」された理由とは?

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「私たちは巨人の肩の上に乗る小人」?

ヨーロッパでは、「過去と現代はどちらが偉大なのか?」という問いを、ずっと考え続けてきました。過去こそが偉大だという考え方が主流だった時代もありますが、12世紀になると逆転して、現代社会が作り出すものの方に価値があるという考え方に変わっていきます。
このことを表すのに、「私たちは巨人の肩の上に乗る小人」という言葉が伝わっています。「巨人」は過去を指し、「小人」は現代を表現しています。そして、小人であっても巨人の肩に乗っているので、巨人より高い位置から社会を見ることができるという解釈でした。そのような考え方に疑問を投げかけたのが、新しさを求めるモダニズム文学の中でも過去の伝統を大事にしようと唱えた人々です。

古典に帰るべきだ

代表的なのはT. S. エリオットやエズラ・パウンド、ジェイムズ・ジョイスといった作家、詩人たちで、1910~20年頃に頭角を現しました。モダニズムでありながらも、古典に帰るべきだという考え方が根底にあるのが特徴で、伝統を受け継ぎながら、なおかつ自分が新しい文学を作っていかなければならないという信念を持っていたのです。この頃は経済の停滞などで社会全体に閉塞感が漂うような時代で、19世紀の主流であったロマン主義と写実主義がマンネリ化する時期とも重なっています。

「引用」に込められた作家たちの思い

興味深いのはこれらの作家たちの多くが、過去の作品を「引用」して創作をしていたことです。例えばジェイムズ・ジョイスは『ユリシーズ』などの小説で引用を多用しています。またエリオットの『荒地』は433行に及ぶ長編詩ですが、やはり引用がちりばめられています。どちらの作品も高い評価を受けました。
引用で作られた文学作品の裏には「過去を重んじる」という思いが込められていたのです。このように文学の変遷と社会に与えた影響などを読み解いていけば、私たちが重んじるべきことは何かといった思索にもつながっていくのです。

古代から人々の心をとりこにしてきた「演劇」の魅力とは?

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「演劇」の臨場感がたまらない!

「演劇」の魅力は、なんといっても舞台と観客席が一体となった臨場感です。観客の反応が俳優の演技にも影響を与え、舞台上と観客席の相互作用が上演作品の面白さを深めていきます。時にはハプニングが起こることもありますし、同じ作品でも上演ごとに違いが見られるのも魅力の一つです。また舞台や観客席の作り方によって、俳優の声の響き方や観客が見た印象などに変化が現れます。このようにライブ感によって「一期一会の感動」が得られる演劇には、ほかの芸術作品とは違う独特の魅力があります。

古代ギリシア劇はオリンピックに匹敵する人気

もともと演劇の伝統は祭儀から始まり、歌、舞踊、演劇などに分化しました。ヨーロッパで演劇が形を成したのは紀元前5世紀頃の古代ギリシアです。古代ギリシア劇の上演は、オリンピックに匹敵する一大イベントで、全市民がすり鉢状の劇場に集いました。舞台では頭巾のような仮面をかぶり、華やかな衣装をまとって演技を行いました。
古代ギリシアの哲学者・アリストテレスは著作『詩学』の中で、劇形式こそが最高の文学形式だと述べています。人間の声と結びついて作り出される演劇が、当時の文学の形として最重要視されていたのでしょう。

知的な刺激が心を揺さぶる

その後、古代ローマ、中世、ルネサンス、近代を通じて、演劇の伝統は新しいスタイルを生み出しながら脈々と受け継がれてきました。シェイクスピアの名前はあなたも知っているでしょう。演劇はそうやって、それまでの演劇様式を打破し新しい舞台表現の可能性を追求してきたのです。
むずかしいと思われがちな前衛劇もそうした追求の一つです。前衛劇の特徴は、知的刺激に満ちた舞台を見て、それは何を表現しようとしているのか、観劇後も頭の中で反すうして考え続けるところにあります。
演劇から受けた感動はずっと心に残り、その後の生き方に影響を与えることもあります。演劇とは、実際に観劇して体感しなければわからない刺激に満ちた芸術活動なのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

「人文学」は人間の豊かさを知る学問です。
人文学がなければ殺伐とした、心の貧しい社会になることでしょう。短期的に成果の上がることに目が向きがちな現代だからこそ、改めて人文学が社会に果たす役割を多くの若者に知ってもらいたいと思います。十分にまだ理解できないけれど、「すごいものを見た」という経験は一生、残ります。若い頃は純真に感動できる時期です。大学ではみずみずしい感性を刺激して、心を豊かにする経験を重ねてください。


夢ナビ編集部監修

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