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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
和気 純子 教授

和気 純子 教授
H30再編後の所属
人文社会学部 人間社会学科
社会福祉学教室
和気 純子 教授 【教員紹介】
キーワード:
介護, 高齢者, 地域包括ケア

高齢者福祉のカギを握る「地域包括ケア」とは?

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「介護保険」が生み出したもの

高齢者支援はソーシャルワーカーやケアマネジャーといった専門職が行うものと考えられ、その質を高め、数を増やすことに焦点が当てられてきました。しかし2000年に「介護保険」が導入され、そのコストがかさむことを理由に、近年は要介護度の低い高齢者へのサービスは地域に委ねられる傾向がみられます。認知症や日常生活に支障がある独り暮らしの高齢者、同じく高齢の配偶者が高齢者の介護をしている「老老介護」の世帯もあります。地域で孤立しがちなそうした人々への支援をどうするかが、高齢者福祉の新たな課題となっています。

地域ぐるみで高齢者を支援する

そこで考えられたのが、専門職だけでなく近隣住民も連携することで高齢者をサポートする「地域包括ケア」という概念です。いわゆる「見守りネットワーク」の形成や誰もが気軽に立ち寄れるコミュニティカフェづくりなどが好例です。住宅、介護、医療、福祉、予防、生活の支援が切れ目なく提供されるシステムを意味する地域包括ケアは、高齢者および専門職だけでなく、地域住民が連携しながら多世代で共生のまちづくりをする役割を担うという側面ももっています。介護分野の人手不足が問題となっている今の日本では、限られた人材を有効活用することが必要です。

若者への期待は高い!

大学もまた地域包括ケアの担い手として注目されており、コミュニティカフェの運営や団地で高齢者の日用品の買い出しといった支援を行っているところもあります。高齢者福祉やまちづくりに求められるのは、革新的な支援方法です。例えば、介護施設では食事や飲酒などの面で制限が多く、入所者は息抜きや娯楽へのニーズを抱えています。行政や施設が基本的な生活外の部分で支援するのは難しいところがあるのですが、学生の自由な発想ならばそこを乗り越えられる可能性があります。また「世代間交流」がまちづくりの重要な要素となっている点からも、若者への期待はとても高いのです。

世界が「高齢化」する中で、日本が果たすべき役割と課題

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日本は高齢者福祉の先進国

日本はこれまで、福祉国家と呼ばれる国々から学び、社会保障の仕組みを整えてきました。しかし、現在の日本のように、「介護保険」制度によって一人ひとりの要介護者にケアマネジャーがつく国はどこにもありません。介護保険は日本が世界に類を見ない超高齢社会だからこそ生まれた制度なのです。今では、高齢者福祉の「先進国」である日本から学ぼうという姿勢が各国にあり、例えば認知症の人への介護方法を自国の福祉に生かしているケースがあります。

高齢者福祉は東アジア共通の課題

特に日本の高齢者福祉に興味を抱いているのが東アジアの国々です。韓国の少子化は日本以上に深刻であり、中国は一人っ子政策の帰結として、夫婦2人でその両親4人の高齢者の面倒をみるという現実に直面しています。両国は年金制度などもまだ成熟しているとは言えず、何とか踏みとどまれているのはかつての日本のように家族が支えているからです。しかし、いずれ日本と同様に支えきれなくなるときが来るでしょう。既に韓国では日本の介護保険を手本にした制度をつくりましたが、両国の介護問題がクローズアップされる日も近いと言えます。

日本に外国人介護福祉士は根付くのか?

世界各国で共通しているのは、介護の現場を支える力となっているのが外国人介護福祉士だということです。福祉国家のスウェーデンでさえ、介護福祉士の大半は移民や短期就労者です。日本もEPA(経済連携協定)の一環としてインドネシアやフィリピンといった国から介護福祉士の希望者を受け入れ、さらに枠を広げようとしています。しかし、いまだに日本語の習得や給与・待遇面での改善などが課題となっています。
こうした問題は現場任せなところがあり、外国人介護福祉士の教育が介護施設の新たな負担にもなっているのです。また、外国人介護福祉士がいかに日本の社会に根付き、一人の人間として楽しみながら生活していけるかも、多文化共生における今後のテーマとなってくるでしょう。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

「死」を身近な存在ととらえている高齢者は、残りの人生の過ごし方を真剣に考えます。その人生の集大成に共に向かい合い、学び合い、支援することは非常にやりがいがある仕事です。
「高齢者福祉」というと、高齢者介護のイメージが強いかもしれませんが、福祉の基盤となる制度や支え合いの仕組み、支援のためのスキルを考えるのが高齢者福祉です。ひいてはまちづくりや社会全体をどのようにつくるかにつながるものであり、自分の視野を広げ、成長させてくれる分野だと言えるでしょう。


夢ナビ編集部監修

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