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岡本 賢吾 教授

岡本 賢吾 教授

都市教養学部 人文・社会系 国際文化コース
哲学分野
岡本 賢吾 教授

キーワード:
論理, 数学, 哲学

哲学的な考え方をすると、世界はまるで変わって見える

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日本酒の醸造過程を哲学的に見ると

日本酒は米と麹(こうじ)、水を醸造させて生み出されています。この醸造過程を化学式で端的に表すことはできますが、どういうプロセスをたどっているのか、説明することは容易ではありません。優秀なコンピュータで計算しても、プロセスはおろかどんな日本酒が製造されるのか、具体的に予測することは不可能なのです。ところが現実には醸造槽の中で化学変化は進行し、きちんと日本酒が完成します。これは哲学的な見方をすれば原材料たちが自ら計算し、結果を出しているとみなすことができるのです。

自然の中にも計算はある?

同じように自然も、何らかの計算を働かせています。例えば月は一定の法則に従い、地球を周回しています。これを単に自然法則に支配されているだけと見るのは、19世紀までの考え方です。月が周囲の環境と情報をやり取りし、自らの位置を定めて動いていると見るのが、現在の考え方です。人間は自らの脳内でのみ計算やプロセスが進行していると考えてしまいがちですが、その見方は正しくありません。複雑な計算やプロセスは自然の中にも含まれ、おのおのが判断して現象を生み出しているというのが、19世紀以降の哲学者たちが導き出した結論なのです。

人間は進化しているわけではない

実はこうした考え方はプラトンやソクラテス、アリストテレスといった古代ギリシアの哲学者が思い描いた世界観に近いと指摘する人もいます。古代の人の考え方は決して荒唐無稽ではなく、むしろ現代人に近かったというわけです。昔にさかのぼるほど人間は愚かで、現代人ならば自然もコントロールできると考えることは極めて安易です。確かに発達した情報機能をもってすれば多くのプロセスを実現できますが、物事はそんなに単純ではありません。「人間も自然の中に深く埋め込まれた世界を構成する物質のひとつに過ぎない」と考えることが、重要な概念に取り組む上でのスタートだとも言えるのです。

数学と哲学の間には、実は密接な関わりがある

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論理に数学を持ち込んだライプニッツ

17世紀に登場したライプニッツは、自然に起きた出来事に記号を当てはめて数学的計算を行えばその現象を説明でき、重要な概念を生み出せると考えました。これが「普遍記号学」と呼ばれるもので、論理の中に数学的要素が隠れていることを示す、ひとつの先駆けとなりました。そして19世紀、今度はパースが言語を記号化し、ライプニッツの推論を展開します。パースは自らを「ライプニッツの再来」と称するように万学の天才でしたが、さまざまな物事に論理が飛躍する傾向がありました。そのため一般の人には理解し難く、断片的な着想は後世へのヒントとなるに過ぎませんでした。

数学記号の礎を築いたフレーゲ

パースよりやや遅れ、ライプニッツの推論を体系付けたのがフレーゲです。数学者だったフレーゲは研究を先に進めるためには、実数や関数を概念的に分析する必要があると考えました。そのために作り出した言語こそが、いわゆる「∀」「∈」といった数学記号の礎になったものです。フレーゲは自らの言語を「概念記法」と名付け、これを使えばさまざまな数学的論理を説明できると考えました。実はフレーゲの着想は大きなパラドックス(逆説)もはらんでいたのですが、ラッセルやウィトゲンシュタインといった後世の哲学者が完成度を高め、概念記法は数学の発展に寄与することになります。

数学者が哲学を変えた!?

フレーゲに代表されるように、19世紀以降は数学者が哲学の問題に大胆に踏み込んでくる傾向が見られました。そもそもライプニッツも微分積分学を成立させた数学者であり、日本でよく哲学の研究題材とされるフッサールも、数学をやっていくうちに独自の現象学を開拓した人物です。ある分野の専門家が探究できなかったことをほかの分野の専門家が解明することはよくありますが、特に数学と哲学の間ではこうしたケースが顕著でした。逆に数学から哲学に重要な概念が取り入れられてもいますし、両者の関係は非常に密だと言えるのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

自分の興味を持ったことを突き詰めることは、学問において大切な姿勢です。しかしあまりにも好きなことばかりに没頭してしまうと、周りが見えなくなってしまいます。ましてや10代後半から20代にかけては、ものの見方やとらえ方が変わっていく大事な時期です。そういうときに視野を狭くしてしまうと、本来はもっと突き詰めたいことに出会えたはずなのに、その可能性を打ち消してしまいます。世の中には新しいもの、面白いものがたくさん転がっていますから、そういうものを受け入れる懐の広さを持って生きてください。


夢ナビ編集部監修

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