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ヴァルター・ループレヒター 教授

ヴァルター・ループレヒター 教授

都市教養学部 人文・社会系 国際文化コース
欧米文化論 ドイツ語圏文化論分野
ヴァルター・ループレヒター 教授

キーワード:
比較文化, ドイツ, 異文化

文化が違えば、見え方も違う~異文化を通して、自分を知る~

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「遠近法」を取り入れた日本人

自分の目で見た時の、奥行きや遠い近いといったものの見え方を映し出す「遠近法」は、現代の日本人にとっては、慣れ親しんだ技法ですが、江戸時代の終わり頃までは、なじみのない技法でした。遠近法が生まれたのは、ルネッサンス期のヨーロッパで、同時代の日本にはまだその概念はなく、当然、日本画にも使われていませんでした。しかし、19世紀に、西洋の美術や技術が日本に紹介されるようになると、日本画にも遠近法の技法が取り入れられるようになったのです。

「遠近法」を捨てたヨーロッパ人

一方、遠近法が当たり前のものとなっていたヨーロッパには、日本の浮世絵などが紹介されるようになりました。そんな日本の絵画に触発され、逆に19世紀のヨーロッパでは遠近法を使わずに絵を描く取り組みが行われるようになったのです。慣れ親しんだ奥行きを出す表現方法をあえて捨て、平面的な日本画の技法を使うことで、新境地を切り開こうとしました。つまり、日本人にとっては遠近法がモダンであり、ヨーロッパ人にとっては遠近法的でないものがモダンだったのです。

異文化を学ぶことは、自分を相対的に見ること

このように、ある文化圏の人にとって自明のことでも、ほかの文化圏の人にとっては、必ずしも自明のことではありません。そのため、同じものを見ても、それを見る人の文化的背景や立場などによって、そこに見出すものは異なってくるのです。
外国の文化や言葉を学ぶ意義は、そこにあります。自分とは異なる文化や言葉を学ぶことを通して、ものを感じたり、考えたりする幅を広げ、ある1つのことに対する自分の理解は、そのものの一部にすぎないことを自覚できるようになります。つまり、異なる文化を学ぶことは、「他者を通して自分を知ること」、言い換えれば、「自分を相対的に見る視点を養うこと」なのです。そして、そうした視点は、グローバル化が進んでいるこれからの時代に、特に必要とされるものでもあるのです。

異文化間の相互作用が新しい文化を生む

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日本文化とドイツ語圏文化の相互作用

異なる文化を比較することは、興味深いテーマを見つけられるという利点がある一方、文化を異なったものと見ることでほかの文化を隔絶したものとして認識し、ステレオタイプなイメージを持ってしまうという欠点もあります。
日本とドイツ語文化圏の交流は、明治時代以降、150年を超える歴史があり、また、交流も活発に行われてきました。特に日本は、医学、法律、文学、音楽などの分野でドイツ文化の影響を受けてきたという認識がありますが、実はドイツ文化も日本文化の影響を受けています。その意味で、日本とドイツ語圏の文化は、比較に適した文化と言えます。

「バウハウス」に影響を与えた日本の美学

例えば、1920年代の日本の建築家たちは、ドイツの建築文化、特に1919年にドイツで設立された美術と建築の学校「バウハウス」に関心を持ち、積極的にその美学を学ぼうとしました。しかし、バウハウスが持つ美学は、実は、日本の美学の影響を受けたものだったのです。そうした例は、ほかにもたくさんあります。「ウィーンモデルネ(ウィーン世紀末)」という1900年前後のオーストリアの文化は、フランスの印象派に続くヨーロッパにおけるジャポニズム(日本趣味)の第二の波を受けたもので、この時代を代表する画家、グスタフ・クリムトの作品にも、尾形光琳など、日本画家の影響が見られます。また、ウィーン工房という芸術家集団が作ったプラカードには、能面の影響がうかがえます。

文化を比較することで見えてくるものとは

比較文化学は、異なる文化間の違いに焦点を当てるだけではなく、文化間の共通点や相互の影響を見出すこともテーマとしています。異文化間の関係を考える際は、文化は「異なる文化との相互作用の上に成り立っている」ということを認識する必要があるのです。さらに、それぞれの文化の持つ異なる要素を組み合わせて新しい文化を創造することについても、近年関心が高まってきています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

グローバル化が叫ばれる時代となり、自国以外の文化や考え方、言葉を学ぶことが非常に重要になってきました。英語が話せるのは、もはや当たり前のことなので、さらにもう1つ別の言語を話せることが望ましいと言えるでしょう。複数の外国語が理解できれば、日本や英語文化圏以外の人のものの見方や考え方を学べ、自分の考え方の幅を広げられるからです。異文化間の交流や文化の比較に興味があるなら、ぜひ、首都大学東京に来て、一緒にドイツ語圏の文化を学びましょう。


夢ナビ編集部監修

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