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網本 和 教授

網本 和 教授

健康福祉学部 理学療法学科
網本 和 教授

キーワード:
理学療法, リハビリテーション, 脳梗塞

脳梗塞で失ったバランス機能を取り戻すリハビリとは

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バランスが保てない「左半側空間無視」

脳梗塞などが原因で、大脳の右半球の脳細胞がダメージを受けると、左側の空間を認識できない「左半側空間無視」という症状が現れることがあります。この症状がある人は、左側にあるものが認識できないだけでなく、身体のバランスも正常に保てなくなります。そのため、まっすぐに立つことが難しいだけでなく、座っている時も、身体が左側に傾いてしまうため、普通に座っていることができません。
身体のバランスを回復させるためには、まず、座イスなどを左側が高くなるように設定して座り、左側に倒れないようにします。この状態をしばらく続けることで、バランスの取れた状態を脳に記憶させます。さらに、脳梗塞の回復にともない、バランス感覚が戻ってくると、今度は、逆に左側を下げるように傾斜をつけて座ることで、身体自体がバランスを取るよう体幹をトレーニングします。

自覚症状の確認と客観指標で症状を評価

このように、回復の度合いや、患者さんの能力によっても必要な理学療法は異なるため、適切な療法を行うには、まず症状を正しく評価することが大切です。評価の方法は、患者さんの自覚症状を確認する方法と客観的な指標を使う方法の2つがあります。客観指標には、重心計を用いたり座っている姿を動画で撮影し、身体の揺れ具合を数字で示すといった定量的な評価と、介助者が観察して回復度を段階で評価する定性的な評価があります。

残った細胞を活発化するためのリハビリ

脳梗塞による身体のまひなどの後遺症は、脳細胞が死んでしまうために引き起こされます。しかし、脳細胞には、セーフティ機能があるため、たとえ一部の細胞が死んでしまっても、ほかの細胞がその機能をカバーすることから、リハビリで脳細胞を活性化させられれば、また正しい動作ができるようになります。そのためには、症状の正しい評価と適切なリハビリのプログラムの実施が重要になるのです。

「左半側空間無視」の治療に使われる理学療法とは

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左半分が見えない「左半側空間無視」

脳梗塞などが原因で右脳を損傷した場合、左側の空間が見えなくなる「左半側空間無視」という症状が出ることがあります。これは、網膜には全体が映っているのに、脳の頭頂葉で情報を統合できず、左半分の空間だけを認識できないという症状で、例えば、食事の時、左半分に置かれたものに手を付けない、円形の時計を描く時、右半分に偏って描くといった行動が見られます。本人は完全に見えているように感じているため、左側が見えていないことがわからず、車椅子の左側のブレーキをかけ忘れたり、左側にあるものにぶつかったりと、生活に著しい支障をきたします。

磁気や電流で脳を刺激して治療

「左半側空間無視」の治療としては、脳に強い磁気刺激を与える「経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激法」という理学療法があります。右脳が損傷すると、健常な左脳の働きが過剰になるので、そこに磁気を与えて働きを抑制することで、右脳を活性化させるのです。また、「経頭蓋直流電流刺激」という後頭部に電流を流し、脳の認知能力を高めるという方法もあります。さらに、「自己教授法」という行動療法もあります。これは、車椅子を止めたら、左側のブレーキを止め忘れないように、「止まったらブレーキ左」という具合に、自分のすべき行動を口に出して確認し、行動を習慣化することで、脳細胞に行動を記憶させる方法です。

時期や回復状態で異なる治療法

こうした理学療法は、時期や回復状態によって使い分けます。脳梗塞になって間もない時期で症状が落ち着かない急性期には、障がいが出ていることを自覚してもらうための療法を行い、症状が安定する慢性期になると、磁気刺激などの治療を行います。ただし、刺激療法は、機材の価格が高く、また神経内科の医師の関与が必要になるため、行える施設が限られます。また、症状が出てから回復するまでに半年程度かかるので、退院してからも在宅でも治療できる仕組みが求められています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

医療関係の学部を選択することは将来の職業を選択することなので、熟慮の上、選択してください。インターネットの情報だけでなく、必ず病院などの現場で理学療法士がどんなことを行っているのかをよく知ってほしいと思います。理学療法士はとても地道な努力と絶え間ない医学的知識の更新が求められます。本当に自分に向いているのかを自問して、その上で病を持った人、障がいを持った人のために真剣に向き合い、そして少しでも役立つ強い気持ちがあるのであれば、理学療法士は素晴らしい仕事です。高い志をもつ学生を希望しています。


夢ナビ編集部監修

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