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浅野 敬志 准教授

浅野 敬志 准教授

都市教養学部経営学系 経営学コース・経済学コース
浅野 敬志 准教授

キーワード:
会計, 利益, 評価

会計は過去の通信簿ではなく、未来への足掛かり

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利益しか見ないことの弊害

簡単に言えば、会計とは企業の利益を計算する仕組みです。しかし税理士や会計士に会計を任せ、利益の数字しか気にしない経営者もよく見受けられます。目先の数字に一喜一憂していると、短期志向に陥りがちです。その結果、業績悪化による株価の下落や銀行からの融資引き上げを懸念して利益を引き上げたり、逆に税金によるキャッシュの流出を抑えるために利益を少なくしたりする決算操作が行われてしまうことがあります。

企業の価値

企業の価値は長期にわたるキャッシュの獲得能力とリスクで決まります。目先の利益にとらわれず、長期的な視野で価値を高める必要があります。日本で最も時価総額が大きいのは、トヨタ自動車。2012年12月上旬時点で、約12.4兆の価値があります。2位が三菱UFJファイナンシャル・グループで約5.4兆円、3位がNTTドコモで約5.3兆円ですから、国内ではトヨタ自動車が断トツであることがわかります。
世界に目を向けてみると、最も高い価値の企業は、iPhoneやiPadでおなじみのアップル社。2012年11月末時点で約5,500億ドル(約44兆円)にもなります。日本が誇るトヨタ自動車は何位かというと、27位。トヨタ自動車以外に50位以内に入る日本企業は、残念ながらありません。
20年以上前にさかのぼると、日本企業の評価は高いものでした。この当時はJapan as No.1と呼ばれていて、世界はこぞって日本企業の取り組みを真似たものです。昔の栄光をもう一度取り戻すためには、現状をしっかり分析し、至らぬ点があれば、それをごまかそうとするのではなく、改善に向けて計画を立て、実行する。そして計画を達成できたかどうかをチェックし、また改善につなげるといったPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを徹底する必要があります。

名経営者に共通すること

PDCAサイクルを回すためには、タイムリーな意思決定に役立つ会計情報が必要です。敏腕と呼ばれる経営者たちは会計を重視しており、たとえば京セラの創業者である稲盛和夫氏は、会計的視点からJAL(日本航空)の再建に取り組みました。「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカー氏の著作を読むと、会計にも精通していることがわかります。ダイエーの礎を築いた中内功氏のように、第一線を退いた後に改めて会計を学び直す人もいます。過去の業績を数字化するだけでなく、いかに未来の経営にフィードバックさせるか。それこそが経営者に必要な資質だと言えるでしょう。

IFRSは世界共通の会計基準になりえるのか

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世界統一の会計基準作りへ

グローバル化の流れを受けて、企業を測る“ものさし”が世界的に統一されつつあります。その“ものさし”とは、IFRS(イファース=国際財務報告基準)です。2005年に、欧州連合(EU)が導入したことをきっかけに、世界各国でもIFRSの採用が進み、今では120カ国以上の国々がIFRSを採用しています。採用していないのは、中東やアフリカの国々、そして主要国では米国と日本くらいです。日本もIFRSの任意適用を認めるなど、IFRSとの共通化をめざしてはいますが、既にある国内基準との折り合いをどう付けるかなど、さまざまな事情から全面的な採用には至っていません。

IFRSの弊害

新基準への切り換えを躊躇(ちゅうちょ)している背景には、政治的駆け引きや企業への負担を鑑みているだけでなく、IFRS自体への懸念があります。「企業の実態をそのまま数字化し、透明性の高い会計基準をめざす」というIFRSの理念は素晴らしいのですが、会計上に見積もりの要素を多分に含み、それを経営者が決算操作などに利用したりして、企業の実態が正しく反映されなくなる可能性があります。また資産の大半を時価や公正価値で評価して透明性を高めようとしていますが、工場の機械など使用価値のあるものを評価するのは難しいのが現状です。結果、IFRSの制定に深く絡んでいたアメリカは自国基準との併用を目指しているようですし、日本も当面は各企業の任意適用とし、国としての方針決定は先送りしたままになっています。

会計にもグローバル化の波

それでも現在、ヨーロッパとの関係が深い一部の日本企業はIFRSを採用しています。国際基準を採用するメリットを選んだからで、他の企業でも、特に商社系を中心に増えていくことでしょう。一方、国内基準自体をIFRSに近づいてきており、今では国内基準とIFRSの差異は1~2割程度にすぎないと言われています。確実に言えるのは、グローバル化の波はものすごい勢いで会計にも押し寄せているということです。会計士や税理士だけでなく、経営者も海外からの目を意識した会計を行うこと、また外国企業の会計を読むスキルが求められています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

ピーター・ドラッカー氏に稲盛和夫氏、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏。会計の専門家ではない彼らが会計に精通していたのは、紛れもない事実です。ビジネスの世界に身を置くつもりならば、会計は将来のビジョンを描くのに役立つことでしょう。一方、グローバル化が進む中、会計を専門にしようとしている人たちは大変な時代に入ります。しかし、これはむしろチャンスです。会計を武器にぜひ世界に羽ばたいてほしいと願っています。


夢ナビ編集部監修

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