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飯星 博邦 教授

飯星 博邦 教授

都市教養学部経営学系 経営学コース・経済学コース
飯星 博邦 教授

キーワード:
GDP, 信用, 景気

金融の信用不安が不景気を生む

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景気のサイクル

景気というものは、いいときでも悪いときでも循環しています。例えば好景気のときは、投資や消費が増えます。供給と所得がそれにつれて増えるので、GDP(国内総生産)が伸びます。すると、それによってまた投資と消費が増大し……と繰り返します。
不景気のときは、この逆です。投資も消費も冷え込むので供給と所得も下がり、GDPも下がります。そして、また投資や消費の需要が下がるという悪循環に陥ります。従来、景気の循環はこのように説明されていました。

最近の景気循環のとらえかた

しかし、最近では金融が景気循環に大きく関与していると考えられるようになりました。
銀行が、ある企業に資金を貸し付けてもよいかどうかを判断するとき、主に参考にするのは企業の「貸借対照表」です。これは左右2つの覧からできている表で、左には土地や機械、株といった資産が記入され、右にはその資産を生み出す元、つまり自己資本と負債(借金)が記入されます。
ここで、株価が下がったとします。企業は多くの株を持っているので資産価値が下落します。また、自己資本も株なので、これも減少していきます。しかし、借金の額は株価にかかわらず不変です。

信用不安が不景気を生む

すると、貸借対照表に表れる企業の健全性は一気に悪化します。そうなると企業の信用が落ちるので、銀行から借りられる資金が減ります。事業への投資も思うように行えず、GDPは減少していきます。
一方、銀行も企業と同じような問題を抱えています。株価が下がって銀行の自己資本が減少すると信用が落ちるので、預金者は銀行から預金を取り崩します。預金は銀行にとって資産を生み出す元手ですから、銀行は企業への貸し渋りや貸しはがし(融資資金を回収すること)に走ります。
これが現在の不景気のメカニズムです。つまり、金融の信用不安が不景気を生んでいるのです。
このように不景気のメカニズムを解明することは、経済学の重要な役割です。さらには、不景気を打破するための政策を考案することも求められています。

政策で経済危機は避けられるのか

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一国の経済危機が世界に波及する

2007年のサブプライムローン問題や、翌年のリーマンショックでは、日経平均株価が大きく下がりました。どちらもアメリカでの出来事でしたが、今や世界の経済は密接につながっているので、一国の経済危機が世界中に波及したのです。そして、2011年のギリシャ財政危機でも同じようなことが起こるのではと心配されています。

不景気を打開する方策

不景気の拡大をストップする方策はいくつかあります。特に金融政策に限定すると、次の4点があります。
まず、金利を下げる方策です。金利を下げると企業が資金を借りやすくなり、投資が盛んになり、GDP(国内総生産)が上がります。
2つ目が、時価会計を停止することです。資産価格をその時々の時価で表示すると、株価が下がったときには不都合なため、株価購入時の価格(簿価)で表示する方法です。この方法だと、多くの企業で資産価格が上昇するので、倒産が減ります。
3つ目は、金融機関に公的資本を注入することです。これによって、銀行の資産と資本が上がり、企業への貸し出しが増えます。
最後が、預金の保護です。仮に銀行が破たんしたときでも預金が保護されるとわかれば、預金者は安心して預金できるので、預金額が増え、銀行からの貸し出しも増えます。

弾は尽きているのか

しかし、これらの方策は今手詰まり状態になっています。日本では金利はすでに0%に近いので、これ以上下げられません。また、財政政策も使える予算には上限があります。
今の世界経済は、鉄砲の弾(たま)がない状態で戦おうとしているようなものです。リーマンショックの際、世界全体で大きな借金をしました。倉庫の中の弾を使い切るまで戦ったのです。その代わり、翌年から打つ弾がなくなってしまったのです。
2011年現在、世界は全般的に需要が下がっているので、この傾向はしばらく続くと考えられます。このように、景気のメカニズムやそれに対する方策を考えるのが、経済学の大きな役割なのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

高校生のあなたは、受験勉強が勉強のすべてになっていて、文系と理系に分かれて勉強しているかと思います。しかし、大学に入ったら、文系理系を意識せずに、数学や物理、あるいは歴史や文学を勉強して、多くの分野にチャレンジしてください。経済学は文系という枠組みに分類されていますが、数学や物理も役に立ちます。また歴史も役立ちます。大学を卒業したら、それらが仕事や趣味に生かされると思いますので、分けへだてなく、できるだけ多くのことを学んでチャレンジしてください。


夢ナビ編集部監修

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